うた☆プリ 短編

□宛名のない手紙
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元気にしてますか。
あのときから、早くも3年が過ぎました。


俺は毎日忙しく生きてます。
アイドルとしての仕事も増えて、たまにヴァイオリンの小さなコンサートも開けるようになって。


そして何より。


――大切な人が、できました。

辛いときはそばにいてくれて、何も言わずに支えてくれる人。

何も言わなくていいと、ただ手を握っていてくれる人。



大切な人がそばにいる瞬間。今でも、ときどき思い出すことがあります。
…昔、死にたいと本気で思ったときのこと。

小さい頃から心臓が弱くて、人より何倍も苦労して、苦労かけて。
やっとアイドルになれたのに、身体のせいで満足にできることなんてなくて。

何度も「大丈夫、次がある」と言ってくれたアイツに向かって、思わず吐き出した言葉。




――「生まれて来なきゃ、よかった」




こんな苦労するなら、こんな苦しい思いをするなら。
生きてる意味なんてない、って。



吐き出した言葉の代わりに返ってきたのは、頬に感じた痛みでした。

人に手をあげないアイツが俺の頬を叩いた事実に、初めて自分の発した言葉の重さに気づきました。


浅はかだったんです。幼稚だったんです。
…それでも、気づけてよかった。


今、俺がここにいること。
息をしていること。
血が流れていること。
温もりを感じられること。
心臓が、たとえ弱くても動いていること。

生きたいと思っていた人がいる。俺は、その人の分も生きている。

死ぬなと、泣いてくれる人がいる。俺は多くの人に支えられて生きている。


生きることが、どういうことか知っていますか。死ぬことが、どういうことか知っていますか。

きっと、正しい答えを知っている人なんていないと思います。
けど、自分なりの【答え】を見つけてください。

辛いとき、それでも前に進めるように。泣きたいとき、大切な人の胸でちゃんと泣けるように。



あなたは、今。

笑えてますか。
泣けてますか。
想いをぶつけられていますか。
想いを言葉にできていますか。
大切にしたい人がいますか。
大切にしてくれる人がいますか。

――幸せですか。




たとえあなたがどこにいようとも。

そこに、あなたの幸せがあることを願って。

どうかあなたが、一番大切な人と共にいられますように。



それじゃ、また。









*宛名のない手紙*

(拝啓。顔も名前も知らないあなたへ)
(俺は今、精一杯生きてます)












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