薄桜鬼
□Caramel Days
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「あ、左之せんせぇー!おっはよーございまーすっ!!」
背中から聞こえてきた大きな声に、原田は振り向いた。
「おぅ。おはよう、藤堂」
――さぁ、また1日の、始まりだ。
*Caramel Days*
(あなたの香りに、酔いしれる)
――風が、桜の花弁を散らしていく。
古くから時の移ろう様を見てきたであろう桜の木の下で、薄桜学園の教師である原田 左之助はそっと溜め息を吐き出した。
何故だろうか…。
こんなにも桜は美しいのに、それを見て【寂しい】と思ってしまうのは――…。
――しかしその考えは、突然の出来事で中断された。
「ぅえっ!?ふぁあっ!!!」
「あ――――?」
べしゃっ
情けない声が聞こえたと思った瞬間、原田の視界は大きく揺れる。
「って〜〜〜ッ…」
「さっ、左之さん!?」
「ん……?」
聞こえてきた声に目を開ければ、驚くほど近くに、吸い込まれそうなほど大きな瞳があった。
「――平助…?」
原田が思わず名前で呼ぶと、平助は頬を少し赤らめて視線を彷徨わせた。
「え……あっ、ご、ごめん!!すぐに退くから…ッ」
「いや、構わねぇけど…。こんなトコで何してたんだ?」
「え、えぇと…」
原田に身体を預けたまま、平助は事のいきさつを話し始めた。