薄桜鬼

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好きになったきっかけは何だっただろうと、平助はふと思う。


――もしかしたら、初めて会ったときは既に好きだったのかもしれない…。




「――――う、藤堂?」


ぼんやりと原田の顔を見つめていた平助は、その言葉で我に返る。


「ふぇっ!?――あ、ゴメン左之さん!」
「《原田先生》、だろ?」


揶揄するように言えば、平助は俯いて小さく『…左之先生』と呟いた。

原田は微笑んで、平助の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。平助は少し驚いたのか、紅潮した顔でぱちくりと原田を見返した。


「ほら、早く行かねぇと予鈴が鳴っちまうぞ?次の授業は土方先生の古典だろ?」


土方はとてつもなく厳しい――というか怖いことで有名な教師だ。生徒たちから裏で《鬼の教師》と呼ばれているくらいに。


「やっべぇ、すっかり忘れてた!ゴメン左之先生ッ!!俺行くね!」

「おいおい、廊下は走るなよー?」


苦笑いしながら原田が言えば、平助は振り向きながら「見逃してっ」と笑い、駆けていく。

そんな犬のような後ろ姿を見送りながら、原田は小さく笑みを零し、呟いた。




「―――ったく…あんなに可愛くされちゃあ、ますます惚れちまうじゃねぇか…」

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