薄桜鬼

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「―――で?原田先生とはもうヤったの?」


4時間目の古典も無事終わり、いつもと変わらず沖田と屋上で昼食を食べている最中、沖田は唐突に平助にそんなことを聞く。


「【やった】って…何を?」


メロンパンをかじりながら聞き返せば、沖田は面白そうに瞳を細める。


「その様子だと、まだみたいだね。――原田先生とのセックスは」
「はぁっ!?」


さらりと言われた台詞に、平助は大きな瞳をさらに大きくさせた。


「そ、総司っ!意味分かんねぇよ!つか、そもそも俺と左之さ――じゃなかった左之先生は付き合ってねぇよ!?」


多少メロンパンにむせながらも否定の台詞を紡ぐ平助。そんな平助に、今度は沖田が驚く番だった。


「え…?付き合ってないの?」


あんなにいちゃいちゃしてるのに?――と含ませて聞いたが、平助がそれに気づくことはない。


「だって…だって何言ってんだよ!俺も左之先生も男だぞ!?そんな、同性で――男同士なんて…」
「いいんじゃない?別に」
「!?」


あまりにもあっさりした物言いに、思われる平助は言葉に詰まる。沖田は相変わらず、暢気に空を見上げていた。


「総司ってば!!――――っ!」


縋るような声を出した平助だが、次の瞬間に息を呑む。
がチャリと聞こえたのは、屋上の扉が開いた音。


「おいおい……次の授業に遅れちまうぞ?藤堂、総司」


後ろから聞こえてきた声。掛けられた言葉。
それに平助が振り向くよりも早く、沖田が立ち上がって駆け寄った。


「土方センセ!珍しいですね。もしかして迎えに来てくれたの?」
「あぁ――…って総司!やめろって!」


するりと自らの腕を土方の腕に絡ませた総司が、土方に顔を寄せて甘えた声を出す。


「いいじゃないですか。ここには平助と僕しかいないんだから。ねぇ…?」
「あーもう。分かった分かった。後でしっかりと可愛がってやるから。今は落ち着いてくれ。な?」
「…はーい………ちぇっ」


頭を撫でられ、たしなめられて。
それでも腕は離さない沖田に苦笑いしながらも、土方が嫌がっている様子はない。

――そこに、いつも生徒に恐れられている【鬼の教師】の姿はなかった。



「―――…え……………?」



ただその場に立ち尽くす平助を見て、沖田はイタズラっ子のように笑ってみせる。


「ほらね?性別も何も関係ないよ。好きだから好き。愛してる。それだけ」
「総司…」


放心状態の平助と沖田を交互に見て、土方は大丈夫なのか、とでも言いたげな視線を送る。
沖田はその視線に静かに微笑み、土方の腕を組みながらそっと屋上を後にした。



―――立ち尽くす平助の横を、柔らかな風が通り過ぎて行った。

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