薄桜鬼

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ひとり屋上に残された平助は、普段あまり使わない頭をフル稼働させていた。


(え、えっと、総司は土方先生と付き合って!いて…でも二人は男同士で……俺が左之さんが好きだって総司は気づいてて………)

「あーーーッ!!もうワケ分かんねー!意味分かんねーよッ!!!」


平助が思わずそう叫ぶと。




「藤堂…サボりのくせに大声を出すとは、いい度胸してんじゃねぇか」



「ひぅっッ!?」


後ろから聞こえた声に、びくんと身をすくませる。おそるおそる振り返ると、そこにいたのは、


「え、あっ…さ、左之さん?」

「それ以外の誰に見えんだよ」


まったく、と笑いながら歩いてくるのは他でもなく、たった今平助が考えていた人で。

驚いた表情のまま固まっていたら、ふわりと大きな手で頭を撫でられた。


「どうした?藤堂のクラスは次の授業、体育だろ。お前が体育をサボるなんて珍しいな」

「………」


きっと自分は今、すごく不機嫌な顔をしているんだろう。そう思っても、平助にはどうも出来なかった。

(なんだ…?胸が、痛い……)

まるで小さな棘が刺さっているような感覚に、服の上から胸のあたりをぎゅっと握った。原田が屈み込んで、心配そうに平助の顔を覗き込む。


「藤堂?」


――ちくり、とまた胸が痛んだ。無意識に原田の服の裾を掴む。


「左之先生、平助って呼んで…」


口から零れたのは、少し震えを含んだそんな言葉。
原田は一瞬目を見開いてから、きゅっと表情を引き締めた。


「―――だめだ」

「なんで…?俺が子供だから?何も分かってないガキだから…っ?誰もいないところなら、ちょっとくらい呼んでくれたっていいじゃんか……!」


言っている途中から、温かい涙がとめどなく流れて頬を湿らせていく。
平助はその涙を拭おうともしないまま、迷子の子供如く、原田の服をさらに強く握り締める。


「ねぇ、なんで…?左之先生は俺のこと嫌いだから…!?俺は―――っ!」

「藤堂……?」


――もう、自分が何を言っているのかさえよく分からなかった。でも、これだけは伝えなきゃいけないと思った―――…



「俺は!ずっと前からこんなにも、左之先生が――左之さんだけが、好きなのに!!」

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