Short

□可愛い恋人
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「クリス兄さん、スホ兄さん・・・事件です;;」

「ユウリ、どうしたの?」
「何かあったのか?」

リビングで寛いでいた2人は。
キッチンから顔を出した私を、不思議顔そうに見ている。

「指輪が・・・」
「「指輪が?」」
「ないんです、どこにも・・・;;」

そう言って、2人が座るソファーの前に行って。
何もついてない左手を差し出す。

「「Σまさかっ!!!」」
「・・・ハイ;;」
「「タオからの?!」」
「・・・そうなんです;;」
「それはマズイな・・・;;」
「殺人事件が起きるねっ!!;;」
「ヤバイです〜〜〜っ!!!」

わたわたと慌てる私達の耳に、カチャリとリビングのドアの開く音が聞こえた。
その音に視線を向ければ。

「・・・・・・・・・・・・・ウソでしょ?」

「「「ゲッ!;;」」」

まさかの・・・タオが立っていて。
その顔が青ざめているから。
間違いなく、今の話を聞いていたんだと思う。

「タオや〜!ほ、ほら!買い物行こうか?ね?」
「そ、そうだな!タオ、服でも買いに行こう!・・・あ!この間、お前が欲しがってたジャケットでも買いに行くか?!」

スホ兄さんとクリス兄さんが、慌てて私を後ろに追いやって。
タオの腕を掴んで、リビングの外に連れ出そうとしてくれたんだけど。

「隊長、ジュンマホ、邪魔!」

あっさりと2人の腕を振り払うタオ。

だよね〜;
クリス兄さんは超!非力だし、スホ兄さんも非力’sだし。
武道をやっているタオの力に適うわけないよね;

タオはスタスタと歩いてきて。
私の左手首を掴んで、自分の顔の前に手を持ち上げた。
その左手の指には、何も着いていない。

「タオ・・・?」

恐る恐る上目遣いで顔を覗き込めば・・・

「・・・っく・・・」

溢れそうな涙が零れないように、必死に耐えているタオ。

あぁ;
やっぱそうなるよね

「・・・な、んでぇ〜?;;」
「タオ、ごめんね?」

タオから貰った大切な指輪。

もちろんいつも着けてたよ?
それこそ肌身離さず、いついかなる時も。

だけどね。
今日に限って料理用の手袋を切らしてて、仕方なく指輪を外して昼食を作った・・・まではいい。
お昼ごはんのハンバーグは大好評で。
メンバー全員に喜んでもらえた。
もちろんタオにも。
それはいい、うん。


だけど、滅多に指輪を外さないから。
外したこと自体忘れてたんだよね、私。

しかも。
無意識に外したから、どこに置いたかも思い出せない。
多分、ハンバーグの種を混ぜるボールを置いていた流し台の上だと思ったんだけど。
記憶違いなのか見当たらなくて。
他にもキッチン中はもちろんのこと、心当たりは全部探して。
宿舎の中も、一通り全部探した。

それでも無かったんだよ;;

「ユウリは!たっおの、こと・・・好きじゃ、ないのぉ?;;」
「Σ違うよ!大好き、大好きだよ、タオ!」
「じゃあ、何でぇ〜;;タオの指輪、無くすなんて・・・たおのこと、ぎらいなんだぁぁぁぁああ!!!;;」

うわ〜ん!と効果音が聞こえる位に、まさに号泣し始めたタオ。

「「「Σタオッ!;;」」」

こうなったら、クリス兄さんにも、スホ兄さんにも。。。タオを宥めるすべは無い。
2人はオロオロしながらタオを抱き締めたり、頭を撫でたり。
「グッ○の新作買ってやるから」とか、「この間食べたいって言ってたケーキ買ってきてあげるから!」とか。
だけど、全然効果ゼロ。
多分、聞こえてない。
そして私も、ダメだと思う。
・・・今回は私が原因だからね、多分ムリだろうし;;

どうしたものか・・・;


タオの泣き声をBGMにうんうん唸っていると。

ガチャ

「タオ、どうした〜?」

ベクが心配そうな顔をしてリビングに入ってきた。

号泣するタオと、それを宥めて・・・いや、実際にはまったく役に立ってない2人のリーダー。
そして悩んでいる私を見て、なんとなく悟ったんだろうね。
てか、こんだけタオが泣いたら。
宿舎のどこにいても聞こえるし、さすがに心配になるよね。

「ユウリっ!がっ!・・・」
「ユウリが??」
「タオの、こっと、、、すきじゃない・・・んだ、もんっ!」

泣きじゃくりながらベクに伝えたタオの言葉に。

「「「違うからっ!!;」」」

私とクリス兄さんとスホ兄さんの声が重なる。

ってか。
私がタオを好きじゃないなんて、ありえないじゃない?

そんな視線をベクに送れば。
したり顔で頷かれて、それはそれで。。。ムカつくんですけど。

「バカだなぁ〜?タオ。ユウリがタオのこと嫌いなわけ無いだろう?」
「でもぉ!ユウリ、指輪・・・」
「指輪??」
「タオが、あげたっ・・・タオ、との!ペアリング・・・な、なくしたってぇぇぇええ;;」
「ぐえっ!;;」

号泣しながらタオに抱きつかれたベクが潰されて悲痛な声をあげるけど。
そんなの今のタオには聞こえないから。。
ぎゅうぎゅうと締め付ける腕を、ベクが「ギブギブ!;;」と半泣きになりながら叩く。

あぁ;
カオスだ、このリビング;;


泣き喚くタオ。
タオに抱き潰されかけてるベク。
その周りでワタワタオロオロしてる兄さん達。

そして。

やっぱり役に立たない私。


もう、本当にどうしよう・・・;;



ガチャ


「ユウリ!あのさ〜・・・って、何事??」

今度は洗面所のほうのドアが開いて。
髪をタオルでガシガシと乾かしながら出てきたのは、チャニョル。

リビングの状況を見て、不思議そうに首を傾げる。

ま、そうだよね。
まさかシャワーから上がったら、リビングがカオスとか思わないよね。
タオが泣き喚いてるな〜・・・位にしか思ってなかっただろうし。

「ちょっとね・・・で、何かあったの?」

ここで私が指輪を失くした事を伝えたら。
確実に!またタオの泣き声が激しくなることは目に見えてるから。
言葉を濁して、チャニョルの「あのさ〜」の続きを促せば。

「タオ〜!ベク、殺すなよ〜」と声を掛けながら。

「コレ、ユウリのじゃない??」


そう言って掲げたのは。


「「「ソレっ!!!」」」

「Σハイッ?!」

私と兄さん達の言葉に、びっくりするチャニョルに。
慌てて駆け寄って、「ソレ」を奪い取る私。


「ありがと、チャニョル!お礼は後でね!!」
「はっ??」

「タオや!!ほら、見て!」

ベクを抱き潰す勢いで、その肩に顔を埋めていたタオに声を掛ける。

「な、なぁに〜?;;」
「ほら!タオ!」

私の声にも顔を上げてくれないタオに。
私は近寄って、タオの顔の目の前に手をかざす。

「顔上げて?タオ」
「・・・やだぁ〜;;」
「タオ?私、タオの顔見たいな〜?」

恥ずかしいけど。
少し甘えた声でタオにおねだりすれば。
ピクリと動きが止まる。

そしてゆっくりとタオの顔が上がって。
必然的に、タオの顔の目の前にある私の手に視線が動いた。


「・・・あぁ!!!」


「ね?タオ、あったよ?」

キラリと私の薬指に光る指輪を見て。
目に涙を湛えたまま笑顔を浮かべるタオ。

「ユウリ・・・タオの、ことっ!好きぃ?」
「大好きに決まってるでしょ?」

ニッコリと笑えば。

タオは物凄い速さでベクをポイッと左手で放り投げて。
右手で私を引き寄せて、そのままぎゅーっと抱きつかれる。
相変わらずの素早さに驚きながらも。
私は、その大きな背中に腕を回して同じように抱き締めた。

「ごめんね?タオ。もう、絶対無くさないから・・・」
「うん!ダメだよ?外しちゃダメ!」
「分かった。気を付けるね?」
「ユウリ、大好きvv」

素直に頷いた私の、頭のてっぺんにキスを降らせるタオは。
間違いなく満面笑顔。

見なくたって分かる。

兄さん達が「「タオ、良かったな〜v」」なんて和んでるし。
ベクは「俺、殺される寸前だったよ?!」って怒ってるし。
チャニョルは「よく分かんないけど、俺、いいことしたわ〜v」と無駄に爽やかに言ってるし。

私の髪を梳くタオの手は優しいし。
見上げれば泣きすぎで赤くなった目を細めながら。

甘いキスしてくれるし。

うん。



今日も何とか。
平和な午後になりそうですv













「で、指輪どこにあったの?」
「あ、キッチンにあったの見掛てユウリのだって気付いたんだけど、後でいいか〜って思ってポケットに入れたまま飯食って、シャワー浴びてさ。洗濯物を籠に放り込む時に思い出したんだよね!」
「「「「お前のせいかっ!!!」」」」
「へ?」


チャニョルにベクの天誅が下るまで後3秒。





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