Long

□Escort
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「たいちょ〜お!」
「何だ?」
「ちょっと行って来ていい?」
「どこに?」
「ちょっとv」
「。。。すぐ戻るんだぞ?何かあれば、迷わず呼べ」
「は〜い!いってきま〜す」

心配そうなヒョン達の視線を背中に受けながら。
ヒョイっと飛んで、さっきの気配を追う。
だって、あの子。
死ぬと思うんだよね、このままだと。

こういうのは得意じゃないし、仕事でもないんだけど。
気になっちゃったから仕方ない。
頑張ってさっき感じた気配を探す。

「。。。見〜つけた!」

ビルの屋上を飛びながら、探し当てた気配に近付く。
そんなに離れてない場所の路地裏で。
囲まれてる2人組みを見つけた。

ギリギリまでダメージあたってるけど、回復させての連続かぁ・・・
なんでこんなトコまで来たんだろう?
あぁ、強い人と一緒だから大丈夫だとでも思ったのかな〜?

ま、いいや。
気付かなかったら放置するんだけどね。
今回は気付いちゃったし見付けちゃったから。
何より何だか気になっちゃったし。

右手を上げて、人差し指にしている指輪に意識を集中させる。

キィィィィン

空気の凍るような音がして、辺りに静寂が訪れる。
視線を落とせば、さっき見つけた2人組みも、その周りの敵も動きを止めていた。
僕の能力で時を止めたから当然だけど。
うん、今日もバッチリだv

「うーん。。。どうしようっかな〜・・・」

敵を殲滅させるか。
手っ取り早く2人だけを助けるか。
あ、でも。
僕が助けたいのは1人だしなぁ〜・・・
決めかねた僕は、ヒョイっとその2人組みのほうに近付いてみた。
さっきも死に掛かっていた人の顔を覗き込めば、結構綺麗な顔立ちをしていて。
陶磁器のような白い肌と睫毛の長さが印象的だった。

「・・・きれい・・・」

思わず手を伸ばしてその頬に触れる。

ピクリと睫毛が震えて。
澄んだ瞳と。
目が・・・合った。

「え?」
「え?!」

待って待って・・・え?
思わず自分の指輪を見てみるけど、何の異変も無い。
もう一回、目の前の人に視線を戻せば。
やっぱりきょとんとした顔で、僕を見ている。

「えぇぇぇぇえ?!」
「Σえぇ?!」

僕の大声に、ビックリして、同じく声を出すその人。
っていうか!

「何で?!」
「え?;」
「何で、動けるの!?タオ、ちゃんと時間止めてるのに・・・」
「は?時間、止めてる・・・??」
「そう!だって、それがタオの力だもん!!ねぇ、何で動くの?!」
「え;いや、そう、言われても・・・あぁ、だから皆固まってるのか・・・」

頬を膨らませる僕のことなんてお構い無しに。
周りをキョロキョロと興味深そうに見回す。

「ちょっと!タオ、怒ってるんだよ?!困ってるんだよ?!」
「え?あ、ごめんなさい;;」
「もう。。。いい!隊長に聞くもん」
「へ?」

首を傾げる人を放置して、僕は隊長に電話を掛ける。

『何かあっ・・・』
「ねぇ!隊長、何で動ける人が居るの?」

1コールで出た隊長の早口を、容赦なく遮って捲くし立てる。

『・・・は?』
「だって、タオが時間止めてるのに・・・動くんだよ?この人」
『どういうことだ?』
「だから〜!タオが時間止めたの!なのに、この人、動くんだもん〜!ねぇ何で?!」
『タオ、落ち着いて。分かるように説明してくれ』
「だから〜〜!タオ、時間止めたの」
『あぁ』
「だけどね、この人動くんだもん!」
『この人って??』
「タオの前に居る人!」

ビシッと指を突きつけると、「えぇ?!;;」と狼狽するその人。
もう、何で普通に動くのさぁ〜!
苛立ちを隠さずに睨みつける僕の耳に、隊長の大きな溜息が聞こえた。

『・・・タオ。お前、そこから動くな。その「動く人」とやらも捕まえておいてくれ。すぐに行くから』
「うん、早く来てね!」
『分かった。じゃ、また後で』
「ばいば〜い」

隊長との電話を切って。
僕は手を伸ばして、ちょっと怯えた表情をしている人の腕を掴んだ。
あれ?細い・・・

「な、何ですか?!;;」
「隊長が捕まえておけって言ったから」
「え?;;離して、下さい」
「ダメ。だって捕まえてないと。。。ねぇ、腕細いね?」
「へ?」
「だから、タオより腕細いね?簡単に折れそうだよ」
「Σっ;;」

袖を少し捲くって手首を出せば、細くて綺麗な白い肌が少し目に眩しい。
こんなに細くて、よくこんなとこまで来れたよね〜。
あ、違うか。
死にかかってたんだもんね、この人。

なんてことを考えていたら。
掴んでいた腕が微かに震えていることに気付いた。

「あれ?どうしたの?何で震えてるの〜?」
「あ、貴方が・・・」
「タオだよ、僕」
「え?」
「だから、あなたじゃなくて「タオ」だよ、僕」
「あ。。。タオ、さんが」
「タオだってば」
「。。。タオ、が」
「うん」
「簡単に、折れそう・・・とか、言う、から・・・」

ボソボソと言いながらも、そのまま俯いてしまった人に。
僕は首を傾げた。

「だって、本当だよ?ポキって折れそうだもん」
「Σお、折らないで下さいね?!;」
「折らないよ?」

折るわけないじゃん。
この人、バカなのかな〜?
また首を傾げた僕に、その人は安心したのか小さく息を吐いた。

「・・・よ、良かった・・・;」

と、そこへ。
一陣の風が吹いたかと思えば。

「タオ、あまり怖がらせるなよ?」

「Σっ?!」
「たいちょぉ〜!」

現れたのは、もちろん隊長。
だけど1人ってことは、他のヒョン達は置いてきたんだろうなぁ。

「それで、この人が『動いた人』なのか?」
「そう!ちゃんと捕まえてたよ!」

掴んでいた手を見せるように持ち上げれば、「わっ!」と言ってバランスを崩す人。

「タオ、もう手を放してもいいよ。ありがとう、偉かったな」
「でしょv」

隊長は頭をポンポンと優しく撫でてくれたから。
僕は掴んでいた手を放した。




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