Long

□My heart is yours forever
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テレビ局のロビーに置いてあるソファーに腰を下ろす。
何だか居た堪れなくてソワソワしてしまうのは・・・仕方ないよね、うん。
だって俺はまだデビューしてるわけじゃないからさ。
何度か来たことはあるけれど。
今日は1人だし。
早くヌナ達来ないかな・・・
落ち着かなくてキョロキョロ辺りを見渡していれば。
ちょうど斜め後ろくらい?
柱に隠れるように人が立っているのが見えて。
ほら、暇だし。
何で隠れてるのかとか、どんな人なのかとか気になったから。
バレないように気をつけながら、その人の顔を見てみる。
さながら。

絶対零度

・・・とでも言うべきかな。
それ以外の言葉が頭に浮かばないくらいの美男子に、思わず視線を奪われる。
いや、もう、本当に。
この世のものとは思えないくらいの綺麗さ。
氷のような冷たさがある美しさ。
まぁ、ここはテレビ局なわけだから、イケメンなんていくらでもいておかしくないんだけど。
きっと数多の芸能人の中でもトップレベルの美形だと思うんだよね。
なんて思っていたら。
微かに話し声が聞こえてきた。


『大丈夫・・・出来るよ』

イケメンの見えない話し相手は男だな。
声からして。

『ヌナは誰よりも素敵だよ。だから、大丈夫』

ん?

ヌナ・・・?!

わ!もしかして、このイケメンさんは。。。女の人?!

驚いてもう一度よく見ようかと思ったけど。
そんなことしなくたって、そのまま視線を逸らすことは出来なかった。

投げかけられる言葉の1つ1つが。
ただ静かに硬い表情をしたままだった人の、心と雰囲気を柔らかくしていく様を目の当たりにしているからさ。

『僕を信じて』

『僕達を信じて』

「・・・うん、信じる・・・」

初めて聞いた声は、凛とした響きがあって透き通っていた。

『・・・デビュー決定おめでとう!ヨルヌナ』

「・・・ありがとう」


うわぁ・・・!

思わず零れ落ちそうになった言葉を、口を手で塞いで何とか飲み込む。

華のような笑顔って、こういうことを言うんだろうね。
嬉しそうで。
幸せそうで。
きっと、見た人はみーんな幸せになりそうな笑顔。
こんな笑顔を向けられたら、それこそハッピーだよね!
きっと素敵な人なんだろうな〜・・・
さっきまでは美男子に見えていたのに。
ヌナだと分かったからか、俺の目には、もう単なる綺麗な女の人にしか見えなくて。

気付かれていないのを良いことに。
『ヨルヌナ』と呼ばれた人が立ち去るまで、俺はじーっと見つめ続けた。





ねぇ、ヌナ。
俺達はもうこの時から、始まっていたんだよ。
知らなかったでしょ?




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