君と僕と真実と

□君と僕と真実と〜君編〜 第3章
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彼に会った瞬間、とくん・・と心臓がなった。


この音が何の音なのか、何の感情なのか。まだよくわからない。


だからこそこの時の私は自分の気持ちに素直になりすぎたんだ。


私のあの一言ですべてが崩れていくなんて――――






緑間くんと初めて喋ってから約一ヶ月がたった。


あの日から私と和くん、壱、緑間くんは一緒にいるようになった。


幸いにも四人とも同じクラスで部活も一緒だったからいろんな面で助かっていた。


「ねぇねぇ、もうすぐ中間テストじゃん?勉強会しない??」


テスト二週間前の昼休みの教室。


壱がそう言い出した。


「んーー?俺はいいぜ。」


「俺も構わないのだよ。寧ろ人事を尽くす行為だ。推奨したいくらいなのだよ。」


「名無子は?」


『うん。もちろん。』


全員一致で勉強会を執り行う事が決まった。


場所は図書室。


実行は今日の放課後。


私たちは短縮部活が終わり次第図書室に向かうことを約束した。





「うっし!じゃぁべんきょー始めますか!!」


和くんの言葉に私たちは頷くとノート、教科書、ペンを取り出した。


各自わからないことがあったら聞くという形にして後は自分でコツコツ進めていく。


しばらくして私の手が止まった。


わからないところがあったのだ。


それは一番苦手な数学で、しかも特に苦手な因数分解。


『あ・・の、数学わかる人いない?』


そう声をかけると三人が私に視線を向ける。


「名無子がめずらしいね。」


『そうかな・・。数学苦手だからさ・・。』


「そうか。ならば俺が教えるのだよ。」
「俺が教えてもいいぜ?」


和くんと緑間くん。


ふたりの声が重なった。


『あ・・えっと・・』


「名無子は誰に教えて欲しいの〜??」


なぜかニヤニヤ顔の壱が私の脇腹を肘でつつきながらそう言う。


『え?えーと・・。緑間くん・・がいいです。』


「え?」


少し抜けたような和くんの声が静かな図書室に響いた。


「なんで?」


ぽかんとした表情の和くんにそう聞かれ私は単純に「なんとなく。」と答えた。


なんとなく・というより、ただ・・緑間くんが良かったから。


彼の香りや優しい声に近づきたかったから。


そんな単純な理由だった。


緑間くんは「教えて欲しいのならばこちらへ来い。」と言って私に丁寧に数学を教えてくれた。


この時和くんが眉根を寄せて不機嫌そうに私たちを見ているとも知らずに。


   
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