短編

□借りた言葉
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「好きだ、」

『好きだ…』

必死に訴えるように私にそういう彼は、
奴と重なって見えた

「お前のことが世界で一番大好きだ!」

『お前のことが世界で一番大好きだぜ』

「っ…」


同じことを言うなんて…やっぱり兄弟なんだなとか
尊敬してた奴を真似てるのかなぁとか
いろいろ考えてるうちに、二つの眼はどんどん水没していって
決壊して、そんなとめどなく流れる塩辛い液体は、
彼をあわてさせるのには十分で

「すっすまねぇっ」
と眉を下げて頭をかく
そんなところまで似たんだななんて思い始めたら
どんどんそれは溢れてきて
暖かい、大きな手が頭に乗って
顔を上げれば、彼は泣くなよなんていいながら困った顔をした


「っ…やっぱ…似てないね」

そう零した私に、彼ははてなを浮かべながらがしがしを頭を撫でてきた
いつもなら鬱陶しがるそれに、私は目を閉じて笑った









奴なら抱きしめて泣けっていうから





借り物のコトバで君をした





兄貴の背中にはとどかねぇけど…
言葉を借りるくらいは、許してくれよ

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