そらいろ

□緑不在の家で
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街の人に挨拶をと思ったのに迷って結局誰とも挨拶できずに帰ってきてしまった…
帰ってくるのすらトゥーシーさんがいなかったらきっと叶わなかっただろう。

「はぁ」

やっぱり私方向音痴なのだろうか…

コンコンコンと早めにドアが叩かれた
誰だろう?とドアを開けるとトゥーシーさんだった

「トゥーシーさん、どうされたんですか?」

「今からちょっと来てくれる?」

そういいながら問答無用で手を引かれて連れて行かれた先はフリッピーさん宅だった。
身体が怯む

「あっ」

「大丈夫だよ、フリッピー今日もう死んでるから」

それって大丈夫なのか?
そう思いつつ少しほっとしている自分に自分で笑ってしまう。
それにしても私がフリッピーさんが怖いなんていつ知ったんだろう
街の情報網とか、そういうのあるのかな。

「うわー!!トゥーシーその子が例の子?!」
黄色いパーカーの男の子が走り寄ってきた。
「あぁ」

「えっあ、シュペルですよろしくおねが「カドルスやっと見つけたわ!!あなたお昼どこ行ってたのよ!!探したのよ!」

カドルス?を突如走ってきたピンクの髪のかわいらしい女の子が締め上げている
「えぇと…」

「騒がしくてごめんな」
苦笑を浮かべるトゥーシーになんとなく同情した。

「黄色いのがカドルス、ピンクの方がギグルス…バカップルだ」

「やだなトゥーシー!まだカップルじゃないよぉ」
「誰がバカップルよ!!!馬鹿なのはカドルスだけよ!」

カップルなのかはわからないけど同時に喋るあたり仲はよさそうだ。

チョンチョン

後ろをつつかれて振り向くと、紫の縞々の服を来たピエロ?がいた
「?」
首を傾げると、彼はにこりと微笑んであっという間に細長い風船を膨らまして風船の犬を作ってプレゼントしてくれた。
風船にはマイムと書かれている
「マイムって言うの?」

そう聞くと、彼は先ほどよりも嬉しそうに大きく頷いた。
マイムさんはフリッピーの家の中へと私の手を引っ張った。
「えぇっ!でも今ってフリッピーさんいないんですよね?勝手に入っていいんですか?」

マイムさんはなにやらパントマイムで伝えようとしてくれているが何を言いたいのかさっぱりである。
「シュペルの為にみんなを集めて改めて歓迎会しようと思ってさ、俺がみんなを呼んだんだ」
後ろからついてきたトゥーシーがそう解説を入れた。

「フリッピーは歓迎会の準備中に死んじゃってさ、僕の家で歓迎会してって遺言だったんだ」
明日には生き返るけどねなんて冗談交じりに付け足すトゥーシーさん。

まさか私がフリッピーさんが苦手って知って殺したんじゃあ…

この街じゃあ殺そうとして死ぬより助けようとして死ぬほうが多い気がして少し考えてやめた。

長い廊下明かりが漏れている部屋がある
あぁ、ここは血まみれだった部屋だ
今じゃ吐き気もしないほど慣れてしまった。
マイムさんがその部屋のドアを開ける

「あれ?」

ドアをあけると一番最初に目に入ったのは赤いジャージだった。
部屋の中には他にも数人いる

「こ、こんばんはドントさん」

「あぁ」

「本当はヒーローを呼べたら良かったんだけど用事があるらしくて、ドントにきてもらったんだ」

なんだろうヒーローの話をしてるトゥーシー、目が輝いてる…
「俺は奴の変わりか」
悲しそうな声色でそうつぶやくドントさんにあわてて口を開く
「そんなことないですよ、私はドントさんが来てくれて嬉しいですよ?」

「…そうか」
何か悪いことを言っただろうか?ドントさんは顔を背けてしまった。

「ヒーローが来てくれたらサインもらったんだけどなぁ…」

「しょうがないですよトゥーシー、ヒーローは人命救助で世界中を飛び回っていますから!」
トゥーシーと同じく目を輝かせて力説するめがねの男の子。
ディドさんって意外と人気あるのかな

「あぁ!申し遅れました。僕はスニッフルズといいます。スニフとお呼び下さい」

「は、はい!はじめましてシュペルです」

「はじめましてシュペルちゃん!」
ぐいっと女の人がスニフさんを押し入ってきた

「あっはい!」
彼女は私の手を触ろうとしてハッと何かに気付いたように一歩後ずさる

「外から来たけど手は洗った?」

「い、いえまだ…」

「大変だわ!!!!」

血相を変えた彼女に手洗い場まで連れて行かれ
これでもかというくらいにごしごしと手を洗われる。
「これで握手できるわ!!」
握手のためにここまでやるとは相当の潔癖症だ…
仕上げにアルコールスプレーを全身にかけられてまたもとの部屋に戻ってきた。

「改めましてシュペルちゃん!はじめまして、ペチュニアよ!困ったことがあったら何でも言って頂戴!力になるわ!」

「あ、ありがとうございます?」

「あ、あと働き口に困ってるって聞いたけど…良かったらうちで働かない?」

喫茶店を経営しているのと付け足す彼女の勢いに少々押され気味に頷いた。

「じゃあ明日!朝の7時に迎えに行くわね!」


こんなに働くところがあっさり見つかるなんて
というかペチュニアさんとてもパワフルだとても…

「とりあえず今日生きてるのはこれだけなんだ、まだ半分くらいだから後々挨拶すれば良いと思うよ」
トゥーシーがそういうとやっと喧嘩を終えたらしいカドルスが胸を張りながら今日は僕が殺したんだよと言った
その瞬間後ろからギグルスが回し蹴りを食らわせてKO
「あなたじゃなくてあなたが電源つけっぱなしにしてた芝刈り機ね!」
ギグルスは呆れたようにそう言うと私に向き直りにこりと微笑んだ。

「はじめましてギグルスよ女の子同士仲良くしましょうね!」
「シュペル・リングです。はい!よろしくお願いします」

フリッピーさんみたいな怖い人ばかりかと思ったけど普通の人ばかりで安心した。
でも隣人が怖いなんていつまでも言ってられないな…

ペチュニアとギグルスが料理を運んできてトゥーシーやカドルスがジュースを注いで歓迎会が始まった。
ドントさんが私のジュースと皿に盛った食べ物を手渡してくれる。
「ありがとうございます!」

「いや」


毎日がこんなに平和だったら良いのにな




 

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