Love Passport

□08
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自室で、学校の課題を片づけていた時だ。
リビングのほうで物音がした。

夕食もすみ、お風呂も入った後で、マルコさんもすでに寝ているはずだった。
ちなみに、マルコさんは兄貴の部屋を使ってもらっている。

まさか、泥棒かと思って、そっとリビングに向かった。
扉を開いて、顔だけで中をのぞくと、バルコニーでマルコさんが外を眺めていた。

そういえば、よく外を眺めている気がする。

いきなり異世界に来て、不安じゃないわけないか。
そりゃ、自分の世界が恋しいに決まってる。
しかもお父様や弟さんがいらっしゃるみたいだし。

ふと、リビングに飾ってある兄貴の写真を見た。
マルコさんのご家族もきっと探し回ってるんだろうな。

私が、兄貴を探し回ったように。

「…寝てたんじゃねえのかい?」

「マルコさんこそ」

「おれはいいんだよい。早く寝ねえと、明日起きれないよい」

「明日も休みだから、いいですー」

「くくっ、そうかい」

笑ってるけど、なんだか空元気みたいだ。
目の下には隈があって、あまり寝れていないんだと一目瞭然だった。

「外、何も見えないでしょう?」

「…よい。異世界は星も少ないのかい?」

「たくさんありますよー。でも、街の明かりがすごいから、星は負けちゃうんですー」

「…そうかい。じゃあ、街の明かりが届かないところまで行ったら、見えるかねぃ」

「…見えると思いますよー」

「飛んでみたいねぃ」

「はい?」

そんな夢国に行きたいみたいなほどの願望でいうことでもないと思うのだが。

「おれは空飛べるんだよい」

「は?」

「不死鳥だからねぃ」

「いや、え、異世界には不死鳥と人間の中間がいるんですか?」

さすがに焦って、いつもの間延びした喋り方を忘れてしまった。

「あー、そういう体になったんだよい」

「どうやったら、そうなるんですかー?」

「悪魔の実ってのがあってねぃ」

「あくまのみ?」

あれか、イソギンチャクのところにいる…あ、それカクレクマノミだ。

「おれは不死鳥の能力がある実を食べたんだよい」

「え、なにその、能力者増産の実…」

「でも、ここは飛んだらバレそうだからねぃ」

「そうですねー、できればあまりそういうことは言わないほうがいいと思いますよー」

人が空を飛んだら、大変だ。
猫型ロボットもびっくりだよ。
そういえば、あのマンガ、人が空を飛んでて手も驚かないのだろうか。

むしろ猫型ロボットに驚かないのだろうか。
ただの見た目がタヌキなのに。

「不死鳥…って、マルコさん、何歳ですか?」

「知らねえよい。それから、不老じゃねえよい」

「えっ」

「まあ、今のところはよくわからねえけどよい」

元が人間だから、不老ではないのか?

じゃあ、瀕死の重傷を負っても、死なないのかな?

あ、そういえば初めてマルコさんに会った時は、怪我勝手に消えてたな。

そういうことか。
怪我をしても、治癒能力がすごいんだな。

自分の思考にはまっていると、横でぼぉっと青く光った。
何事だろうと、振り返ってみると、本日二度目の絶句。

一度目は、マルコさんのハーレム事件。
二度目は、いまだ。

「え、えええええ!?」

そこには、腕が青く燃えているマルコさん。

「ちょ、ちょ、私ここしかないんですから、火事とか勘弁してください!怒られるー!」

「おれの炎は燃える属性じゃねえよい」

「そういう問題じゃ……あれ、」

「?」

「あおい…とり…」

「??」

怪奇現象研究同好会の会長が言ってたことを思い出した。

青い鳥と思い出がないかって。

え、あの人実はエスパーだったのか?
あれ、でも拒んでるって、なんだろ?

もう一度、あの人に話を聞きに行かないと。

「マルコさん、夜は冷えますよー」

「…ん、もう少しいるよい」

「そうですか」

「ちゃんと寝るよい」

「なら、いいですー」

自室に戻ってから、パソコンを起動させて、学校のホームページを開いた。
同好会でも部活動の活動日ぐらいは記載されてるはずだ。

だが、あいにくとさすがに日曜日は活動していなかった。

青い鳥は、マルコさんのこと。
それを拒んでるとは、どういうことなんだろう。







(連絡先、聞いておけばよかった…)

(月曜日でいいかなー?)


珍しく、焦ってる自分がいた。

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