Love Passport

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「何もすることがなーい」

「…勉強はいいのかよい」

「課題はもう終わりましたー。それから私は頭がいいのでいいんですー」

そう返せば、マルコさんがやたらと不審な目を向けてきた。

「あー、その顔は信じてませんねー」

「…よい」

「私こう見えても、頭いいんですよー。全国の同年代の学生の頂点に立ってますからー」

「は?」

「全国模試というものがあってですねー、なんと私は1位以外とったことがありませーん」

「…へぇ」

「あー!今度は、一瞬で興味を失くしましたねー」

「やかましいよい」

べしっと頭を思い切りたたかれた。脳の細胞が壊れたらどうするんだ。
優秀な成績のおかげで、学費はほとんど免除なんだぞ。

それぐらい、頭がいいんだぞー。

ま、それは置いといて。
結局、雷についてのニュースは初日以降、あまりしていなかった。
もう政治家の汚職事件でもみ消されてしまっている。

どこの局も似たような報道しかしていなくて、いい加減嫌になってきた。

「マルコさーん、出かけませんかー?」

「どこにだい?」

「んー、海…とかー?」

「行くよい!」

返答が早いな、おい!

つまらなさそうに私が以前購入した本を読んでいたマルコさんが、海に行こうと言ったとたん、目を輝かせた。

こんないい歳したおっさんがそんな目を輝かせても、かわいくなんか…………、


かわいくなんか………………ありました(真顔)

ばたばたと部屋に戻ったと思うと、着替えて出てきた。

「早く行くよい!」

「いや、あの、私の準備がまだ…」

「早くするよい!」

「え、ちょ、わわ…!」

「よいよい!」

もはや語尾ですらない。

せっかくお弁当でも作ろうかと思っていたのに。
まあ、電車で行くから駅弁でもいいか。
この時期は、海水浴をするキチガイはいないから、ゆっくりできるだろう。

ニットとスカートに、寒くなったらいやだから、ニーハイを履いた。
たまには、メイクするのもいいだろうと思い、簡単にアイメイクをした。

部屋を出ると、今にも飛び出しそうな勢いでマルコさんがうずうずしていた。

「ちょっと待ってくださーい。まだ携帯と家の鍵が…」

「もう持ったよい!」

どんだけ海に行きたいんだ、このおっさん。

というか、楽観主義の私がなんでツッコまないといけないんだ。
私は基本、ボケのほうなのに。

「そんなにあわてなくても、海は逃げませんよー」

「!そ、そうだねぃ。悪かったよい」

そして、見るからにしょげるな!

家の鍵をしっかりと閉めて、いざ出発。

「なに、飛んで行こうとしてるんですかー?」

「こんなちんたら歩いてたら、陽が暮れるよい」

「徒歩で行くわけないじゃないですかー。あれに乗るんですよー」

「あれ?」

私が指差すほうに会ったのは、電車だ。

「海列車が、陸にあるのかい?」

「いや、むしろ海に列車はないですよ」

さすがに列車も海の下を通るよ。

駅について、切符を2人分購入すると、先に改札を通って見せた。
どうやらマルコさん自身も頭は悪くないらしく、見よう見まねではあったけど、改札は難なく通れた。

電車が来るまで、ホームのベンチに座っていると、マルコさんがため息をついた。
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