二次創作1 PWS FAIRY TAIL


□1.change
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『お姉様』
「なぁに?」
『ご覧になって。あちらに』
「あっ!魔法屋だ!やっと見つかったぁ…!行こっ」
『はい』

フィオーレ王国。

人口約1700万人の産業に富んだ永世中立国。

主な産業は酪農、園芸農業と言われていますが、お姉様。ルーシィ•ハートフィリアとわたくし、クルーチェが訪れたこの街、ハルジオンはその中でも多くはない漁業の街。
他にあまり多くないこともあって、非常に港に活気があり、その産業は盛ん。

その影響を受けてか、アースランドではどこにでもある、と言われるくらいにあちらこちらにあるはずの『魔法屋』の産業が発展しておらず、店が今の今まで歩き回って見つけたのがこのたったの一軒。

ちなみに魔法屋というのは文字通り、魔法を道具として売る店のことですわ。

正直…。見た目には全く期待は出来ませんが…。お姉様が喜んでおられるので、ここは黙しましょう。
わたくしは胸に誓った通りに、お姉様の金色の揺らめく髪と、女性らしい広くはない、その背中をただただ沈黙して追う。

チリンチリーン。

ドアを開けると同時に上の鈴の仕掛けが鳴って、向こうから店主が出てくる。

お世辞にも綺麗とは言えない店構え。
やはり店主もなかなかに…、いえ、失礼ですわね。ここは何も言わずに静観静観…。

「ん?いらっしゃい、お嬢さん」
「一つ聞いてもいいかしら?」
「どうぞ」
「この街には、他に魔法屋はあるの?」
「残念だけど、ここ一軒だけだね。ここは魔法屋をやるより魚売ってた方が儲けになるからねぇ」
「えぇ!ここ一軒しかないの⁉︎」
「まぁま、そう言わず。見かけによらず割と揃ってるよ。見てってくんな」

本当に黙していたわけですけれど…。
ここ一軒しかないというのはマジですの?

正直小きたな…ん、んっー!コホンコホンッ…。

少々埃を被って黄ばんだ商品の並ぶここにいいものが揃っているとは思い難いのですが…。
お姉様も「しょうがないか…」なんて漏らしながら店をグルリと見回す。

狭いのでわたくしと立ち位置を入れ替えるような感じで。
わたくしのかぶる麦わら帽子は邪魔なので撤去ですわ。
それにしても非常に間抜けな、犬のお尻を追い回す仕草のようでシュールな絵ですが、仕方がないのです。

狭いから。狭いからなのですわ。

そんなことより…。確か、お姉様のお探しの魔法具は…。
わたくしも少し視線を巡らせて、鍵型の魔法具を探してみる。

『星霊魔導師』であるお姉様は、鍵を用いて、星霊界にいるとされる星霊を呼び出し、契約することである限られた期間、それを召喚し、様々に役立てる魔法を使える魔導師。

それにアイデンティティをお持ちのようで、今もすでに6体の星霊と契約していながらにしてさらなる星霊との契約をしたいそう…。

素晴らしき誇り…。流石はお姉様ですわ…。
そのひたむきな思いにお答えすべく!鍵はいずこに!

「あっ!あった!」
『あ、あら…。お姉様。見つかりまして?』

無念…!すでにお姉様の胸元には銀に輝く鍵。

くっ!いえ…。お姉様が喜んでいるのだから…、わたくしもその喜びを享受しなくては…!

顔が引き攣っていないことを祈り、なんとか声を絞る。
どうやらお姉様は相当嬉しかったのか、気づかれていないご様子。

「うん!これ欲しかったんだ!」
『それは?』

確か…。『白い子犬(ホワイトドキー)』…、だったような。
全く強力じゃないよ?なんて言う店主を尻目に、お姉様はどこか喜ばしげに両目を閉じて謳うように説明してくださる。

「これはね、子犬座のニコラ!能力自体はすごく脆弱だけど、とっても可愛いの!愛玩星霊として有名なのよねぇ」
『そ、そうですか…。因みに、それは一体幾らで?』
「えっとぉ…」

あ、値札はわたくしの方が近いですわね…。
えっと…。

いち、じゅう、ひゃく、せん、ま、

ん?

にまん?

何故か、頬に汗が伝いましたわ。

何故かしら。本当に。

お高いのね。随分と。

「にっ!20000J⁉︎嘘!高っ!」
「そう言われても…仕方ないねぇ…。ここいらじゃ仕入れが悪くて、どうしても値が上がっちゃうんだよ」
「うぅ…。少しおまけしてぇ〜!」
「お客さん、それでも結構切ってるんだよ〜…」

そこをなんとか!と、お姉様は逞しく前へずい、と身を乗り出し値切り始める。
旅とはお金のかかるもの…。ましてまだまだ先は長いのです。
わたくしもご厄介になっているゆえ…、感謝の念しかありませんが。こうなったお姉様はもはや誰にも止められませんわ。
店主様…。どうかお姉様のために…。

静かにわたくしは、

『ご愁傷様ですわ…』

と零してしまいました。
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