『オオカミとリス』

□004.点火
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扉を開けて…後悔した。


なんとなくあれから大野さんに会ってしまいそうで、喫煙所から遠のいていた。

翔さんに「禁煙でもするの?」と聞かれ、返答に困ったけど。

まぁ吸わなくても中毒的でもないから我慢できる。

けれど、ついつい仕事のことで考え事をしていたら、無意識のうちに足が向かっていたようだ。


「あ…」

「…よう」


このままこの場から立ち去ろうか…

入口で一人留まっていると、もう一人いた社員が扉を閉めて出て行ってしまった。


「あ…」



大野さんと二人きり…



「…あのさ、とりあえず…座ったら?」


入口で固まる俺に、大野さんは眉尻を下げながらふわっと笑った。






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