『オオカミとリス』
□005.同期
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「お、意外なの持ってんじゃん」
デスクの後ろを通った翔さんが、俺の手にしたライターを珍しそうに眺める。
「まぁ…貰い物なんですけどね」
青い液体の中を揺れる黄色い魚が、本当に生きているようで美しい。
「このライター…どっかで見たことあるな」
「え?」
「誰に貰ったの?」
「あー…大野さんです」
その名前を聞いて、ピンときたようだ。
「そうだ!智くんだよ」
「翔さん喫煙所行かないのに、よくわかりましたね」
先日、翔さんは同期会があったらしく、同期の大野さんと席が一緒になり。
その時に見たこのライターを覚えていたらしい。
たしか、大物を釣り上げた記念に買ったって話してたなぁ…なんて、懐かしんでいた。
「あれ?ニノ、智くんと仲良かったの?」
「あ、いや、たまたま喫煙所で一緒になっただけですよ…」
なんて冷静を装ったけど…耳がみるみる熱くなっていくのがわかった。
…仲良し、かぁ。
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