『オオカミとリス』
□007.呼出
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電話では気づかなかったけど、思いのほか翔さんは酔っていた。
退社時、偶然にも大野さんと一緒になり、呑みに誘ったという。
「ニノがまさか智くんと知り合いだったなんてねー」と、ニコニコしながら、翔さんは大野さんにもたれ掛かっていた。
「翔ちゃん、相変わらず酒弱いね」
「そうなの!あん時と変わらねー」
入社式後の飲み会でも、結構早い段階で酔い潰れていたらしい。
その時も大野さんが面倒をみたらしく、帰すのが大変だったと苦笑していた。
ビールを呑みながら、そんな二人のやりとりをぼんやりと見ていた。
まぁ…翔さんは酔ってクタクタになっているけど、大野さんはふわっと笑って、翔さんの話を聞いている。
翔さんを支えるように、肩に手が触れていて。
こぼしそうなグラスを支えてあげたり、テーブルの水滴を拭いてあげたりしている。
あまりにも無防備にもたれ掛かっている翔さんに、なんでか分からないけどだんだん苛立ちを感じていて…
…って、何でだ?
おかしいな?と、訳のわからない苛立ちは奥底にしまって、残り少ないビールを煽った。
翔さんはその後も、ふにゃふにゃになりながら喋り続けていて。
大野さんはウンウンと相槌を打ちながら笑ってた。
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