『オオカミとリス』
□009.交換
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なんとなく気不味かったけど、会話がなくてもいいようないつもの空気に、どこかホッとする。
低くしたテレビの音をBGMに、他愛もない話をしていると、いつの間にかビールの空き缶が増えていった。
そういえば…
ローテーブルの隅に置いてあった、大野さんのライターを手に取る。
「これ…返します」
手にしたライターを確認して、大野さんはそのまま俺に戻した。
「お前にやるよ」
手のひらの上で、魚がユラユラと揺れる。
「え…でも、記念のライターなんですよね?僕が貰っても…」
つまみを口にほおりこみ、ビールを流し込みながら大野さんはライターを眺めていたが。
何か思いついたように、ふわっと笑って俺を見た。
「じゃあさ…代わりをちょうだい」
「え?何を…」
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