『オオカミとリス』
□014.ワケ
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宣言したんだから、ちゃんと守ろうと決めた。
小動物のように警戒してたから、驚かせないように注意して。
触れられそうな距離にいても、迂闊に近付かないようにして。
でないと、気持ちが揺らいで、止められない衝動に駆られてしまいそうで…ほんと気を付けた。
そんなふうにしてたら、あいつも少しずつ警戒しなくなってきて。
少しずつ緊張もなくなってきて。
普通に笑顔を見せてくれるようになった。
嬉しかった。
最初からこうすれば良かったんだ。
そしたらまた、普通にいい関係でいられるんだ。
ようやく築いたこの信頼を取り壊したくなくて、理性を保つのに必死になっていた。
でも…
あいつは、最近…ふと寂しそうな表情をする。
目が合えば、クリッとした瞳でふふって笑ってくれるんだけど…
急に不安そうにして…
俺、何かやっちゃった?
その理由がわからなくて、でもどうしていいかもわからなくて。
ただ遠くから、あいつを見ていることしか出来なかったんだ…
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