鬼灯の冷徹

□地獄の沙汰も鬼神しだい
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「大丈夫かい?」

「うちにおいで」

「もうひとりじゃないよ」

「たんとお食べ」

「好きなだけ居るといい」









そう優しい言葉を私にかけてくれていた老婆が豹変したのは、
いつからだっただろうか。




――――――――




――――




――




「    さん?」




心地のいいバリトンボイスによって私の意識は引き戻された。

どうやら生前のことを思い出してしまっていたらしい、呆けていた事により目の前の鬼神様の眉間に深いシワが刻まれる。




「あ、え、なんでしたっけ」

「....やはり聞いてませんでしたね」




どうして今思い出したのだろうか、そんな疑問が浮かびつつ鬼神様をまじまじと見ていれば、自然と口が動く。




「あれ〜鬼灯様老けました?」

「....はい?」




あ、ついやってしまった。
どうにもこの鬼神様を前にすると口が滑る。なんというか馬鹿にしたいというかどうにかして顔を砕けさせたくなるというか。




「シバくぞ小娘」




こうしてカウンター(腕ひしぎ十字固め)が返ってくることも、その後辛くなることも学習済みの筈なのに人生とは上手くいかないものだ。




「あたた....」




落ちる寸前で開放された体をさすっていれば鬼神様がため息混じりに話し出した。




「    さん、二度目はありませんよ
耳から血が出るほどかっぽじってよく聞いとけ」




最後に暴言が発せられたがもう慣れた。はぁ、と軽く返事をして鬼神様の話に耳を傾ける。




内容は、至極簡単なものだった。




「勤務地の変更?」




「はい」




そりゃない、ありえない、まさに鬼だ。




「私、今の部署に二週間前入ったばかりなんですが」




やっと周りとも打ち解けられて、仕事もミスが少なくなってきたところでこれだ。

嫌がらせとしか思えない行動に納得がいくわけもなく私は鬼神様に説いた。




「あのですね、私は移動させられる心当たりがないと言いますか、もうこれ一種のイジメなんじゃないかといいますか、不服です」




「じゃあ無職ですね」

「鬼!!!!!!!!!!」

「鬼です」

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