ニオブン
□零れ落ちる雫
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「に、お...。待ってよ...!」
でも仁王は止まらず進んでく
わずかな期待を込め伸ばした手。でも空中で空振り。
届かないとは知ってた。
なのに、諦められない俺って馬鹿?
俺よりもずっとずっと前に楽しそうに、微笑んでる仁王がいる。
けど、俺に微笑んでるんじゃ無い事位知っていた。
「なぁ、戻って来てよ。におー...!」
手を伸ばしても伸ばしてもお前には届かない、悲しいくらいに。
少しだけ仁王が振り返った。ほんの少し。
その顔が憎くて憎くて愛おしかった。
何もいらないから。全て犠牲にしても構わないから。
お願いだから戻って来てよ。
笑いかけるのはあの子じゃなくて俺にしてよ...。
頭の中にはまだ響いてる。
“別れよう”の四文字。聞きたくなかった。
追いついた仁王の服の裾を掴む。
だけどそれは
指先から零れ落ちた...
(お前に届くことは無くて)