夢の先
□2.中学
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家を出てからも、考えるのは今朝まで見ていた夢のことだった。
よりによってこんな日にあの夢を見なくったって。
・・・こんな日だから、見るのか。
だんだんと学校に近づいて行くにつれ、鼓動が高まってくる。
自慢じゃないが私はこう見えても緊張しいだ。本当に自慢じゃない。
緊張しているくせに平静を装っている事がほとんどだから、これを言うと嘘だろうと言われるけれど、本当はクラス替え後の自己紹介でだっていちいち緊張している。
「おはよう」
この『おはよう』は多分私に向けられているのだろう。
でも登校時の『おはよう』なんてそこら中で言っているんだから、自分が言われているのだと分からない時だってある。
だから今はその『気付いていない』体で無視してしまおう。
「聞こえてるくせに」
ずいっと横に並んで歩いてきたのは相変わらずリサだ。
「ん、はよ」
やっと私がそう返す頃には私達はすでに昇降口まで来ていた。
「なんで無視すんのよ」
「返事しなくても横に来るかなーと思って」
「あーそー。んで?そっち教室じゃないけど、どこか寄るの?」
私は聞かれてからバッグをあさり、今朝折れないように入れた退部届を見せた。
「辞めるの…?」
「そうする事にした」
きっとリサは止めるだろうな。
「帰宅部の私が言うのもナンだけどさ、先月3年生が引退してさ、あんたキャプテンになったわけじゃん」
「うん」
だいたいこの後リサが言う事は想像できる。
「全国大会にも行けてさ、あんた個人ではU−15(15歳以下日本代表)にも選ばれたでしょ?」
「うん」
「U−15のチームでもさ、まだ2年生なのにスタメンでさ、さんざんっぱらメディアにも取り上げてもらってさ『10年に1人の逸材』って」
「うん」