夢の先

□4.変な双子
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 私はたくさん本を読む。
 ミステリーを始めとする推理小説からギャグ漫画や少年漫画まで結構何でも読む。
 ただ1つ。キラキラでふわふわな少女漫画だけはあまり読まない。
 読みたくないわけではないので何回かチャレンジしてみた事もあるが、どうしても面白いと思えない。
 もしかしたら気持ちが分からないのかもしれない。私はあんなドキドキする恋愛をした事がないから。
 それでもちょっとロマンティックな妄想はあって。
 物語にちょいちょい出て来る学校の屋上のシーンが私の憧れだった。
 本物は思っていたより綺麗ではなくて、思っていたよりあちこちがサビてたり、思っていたより地面も汚れていたりしていたけど、そうそう文句も言ってられないので、とりあえずぐるっと辺りを1周歩いてみた。
 長い間ここには誰も来ていないようで、どこからか飛んできたビニール袋や砂やゴミが散らばっていた。
 少しだけきったねぇとか思っちゃったりして、ショックな感情が攻め込んで来たけれど、これが当たり前だと言葉に出してそいつらを追いやった。
 携帯で時間を見たらもうほぼほぼ暗くなる時間だったので、本当はこれからここの大掃除でもやりたかったけど、今は退散する事にした。
 校舎の中へ入って歩き出したら体が軽かった。嬉しかったのだ。
 自分が感じているより心はこの事実を喜んでいるようだ。
 正直9割9分、屋上は閉め切られていると思っていた。もし開いていたとしても、先客がいて私が割り込める隙はないかと。
 今日はいなかったというだけで、もしかしたら先客はいるのかもしれないが、あのコンディションじゃ頻繁に人が出入りしているようには見えなかった。
 想いが溢れるように声が漏れた。
「やーべぇ」
 そう、私は結構口が悪いのだ。
「・・・・・・何が?」
 ・・・やーべぇ。
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