夢の先
□7.しりとり
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ひとつ、気になる事がある。
蓮だ。
蓮の隠し事、とでも言おうか。
知っての通り、私も律も、そして双子も、蓮が“何か”を抱えている事は前から気が付いていたし、私達が気が付いている事に蓮も気が付いていた。
それでも私達は言いたくないのならそれでいいと思った。
私だって皆に全てを話しているわけではないし。
しかしそれが、最近はなんだか自分では上手く隠しきれないくらいに彼の中で大きくなっていっている気がする。
これは私の推測でしかないが、きっと間違ってはいない・・・気がする。
何度かカマをかけて見た事はある。色んな話題を振ってみて、さりげなく表情を探ってみる。
少しずつだけれど、なんとなくそれは家族の事なんじゃないかなと思う。
いや本当は本当に何がなんだか分かんないんだけど、たまに見せる蓮のあの顔は、あの表情は、ほおっておけない。
いや、ほおっておいてはいけないんだ。
ほら、また。また蓮は昇降口の前であの顔をしている。
何がそんなに彼を苦しめている?誰がそんなに彼を苦しめる?家族?家族って何だ?家族で何をしたらそんなに辛くなる?
喧嘩、離婚、育児放棄、事故、虐待、いやそれは考え過ぎ?
一瞬、目を疑った。
その時見えたのは、半袖が風に揺れて見えた肩の大きな青あざ。
「あ、れは・・・」
私が見ていることなど気付かず、蓮はゆっくりと下駄箱を開けて自分の靴に手を伸ばす。
私は自分でも気付かないうちに蓮の腕を掴んでいた。
驚いた蓮は持っていた靴を落とし、目を見開いて私を見た。
蓮と目が合って初めて、自分が凄い顔をしている事に気が付いた。
「どうしたの・・・?」
当然の反応だ。
「いや、あの・・・一緒に、帰ろ」
そんな事しか言えなかった。
さっきのような強い風が吹かなければ見えないところに大きなあざ。
もしかしたら違うのかもしれない。私の勘違いだった方がよっぽどいい。
でも、蓮は――――虐待を受けているのではないか?