夢の先

□8.決心
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「おはよ」
「はよ」
 翌日の朝、昇降口でさっそく蓮に会った。
 昨日家に帰って改めて考えてみたら、何となくは時間を引っ張ったものの、結局なんの解決策をあみ出すでもなく、普通に世間話のようなものをして帰ってしまったことを反省した。
 何のための時間だったんだあれは。
 蓮の下駄箱は一番上の段で、背の高い蓮でも少しは腕を上げなければならない位置にある。
 だから腕を上げて蓮は下駄箱を開ける。
 でもその時、少しだけめくれる半袖のシャツの裾から、包帯が見えた。
 前回は青アザ、今回は包帯。しかも同じ場所に。
 こういう時、自分の無力さを感じる。
 余計なお世話なのかもしれない。
 家庭内の問題というものは勝手に他人が踏み込んではいけない事だとは分かっている。しかもこんな1クラスメイトが。
 それでも私はお節介だから、面倒臭い人種だから、放っておけない。
 放って置いちゃいけない、そう思う。
「腕、どした?」
 私は知らない振りをした。
 蓮は一瞬目を見開いて、ぎこちない笑顔になった。
「ん?昨日珍しく料理なんかにチャレンジしちゃったらちょっとね」
 嘘だ。
「そう。アホだなぁ」
「奏多出来るの?料理」
「そんなに高度なものをお求めにならなければ」
「へぇ以外」
「なんだそれ」
 階段を2回まで登ると律に会った。
「あらお2人さん、おはようございます」
「「おはよ」」
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