Lion
□2.能力の差
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キーンコーンカーンコーン
「きりーつ、きおつけー、れー」
1時間目の授業はいつだって憂鬱だ。
これから6時間もあるのかと思うと、教室から抜け出したくなる。
「はいじゃあ今日はこの前の続きから」
一般受験ではなく推薦で進学しようとしている身としては、勉強するのに何のモチベーションもない。
頬杖をつきながら教科書を眺めていると、後ろの席からチョンチョンと背中をつつかれた。
「ん?」
振り向くと、唯一の友達の顔。
「ここ分かる?」
指さしたノートの問題にはかすかに見覚えがあった。
「ん」
口での説明が面倒な長文問題なので、私はノートごと彼女に渡した。
「はやっ。もうやってあるの?」
「いや今日じゃないけど、前回のうちに」
「はっや」
そうでもないよと心の中で返しつつ、前に向き直る。
友達をつくるのは大変だった。
絶対に言えない秘密があるからこそ、気持ちが打ち解けづらい。
どんなに仲良くなっても言えない事があるという思いが、まず人との距離をつくるのだ。
小さい頃から人目をさけて生きてきた。
みんなの輪には入ってはいけないと教えられてきたし、私を輪に入れてくれるような人もいなかった。
100%覇気消せるようになった今でも、体と心に染みついた習慣は消えない。
他人とは一線置く事が、私の生き方なのだ。
しかしこの密閉された学生生活というものの中で、友達がゼロというのは、いささか不便である。
そう思って何人かに声をかけたが、どうも会話がはずまなくて、どの子もダメだった。
もう面倒になって、1人でいいやと諦めた頃、この子、真冬は声をかけてきてくれた。
『お昼一緒に食べない?』
もう天使かと思った。
真冬は前日まで女の子たち4,5人のグループにいたのだけれど(ちなみに私は1人で食べてた)、自分には合わなくて私のところに来てくれたのだと。
『ずっと話しかけたいと思ってたんだよね。勇気出してよかった』
も う 天 使 か と 思 っ た 。(2回目)