木花*其の弍*

□33.師弟の物語
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現れた敵は2人だったが

うち1人は呆気なく、秀一と飛影に倒された。

『秀一君…飛影君…』

茂みに息を潜める奈由は、秀一達を静かに見守った。

「俺達の足止め役にしては、役不足だったみたいだな。逃げるなら今のうちだが…お前も死にたいということか?」

「ふっ…そいつはごめんだな。死ぬのは怖いからな」

敵は不敵な笑みを浮かべて、隠し持っていた謎のリモコンを取り出し、スイッチを押した。

すると、森の奥深くからズシンズシンと、地響きのような音を立てて、何かが姿を現す。

「妖鋼獣、ガタスバル。痛みも死の恐怖も知らない鋼の魔物。イチガキ博士の傑作だ。さぁ、ガタスバル…奴らを殺せ!」

高さ3、4メートルはありそうな巨大な魔物。

ガタスバルと呼ばれたその魔物は、秀一達目掛けて、伸縮自在に設計された腕を巧みに使いこなしながら、ダイナミックな攻撃をした。

『うわゎっ…!』

なりふり構わない攻撃により、森の木々があっという間に薙ぎ倒されていく。

奈由は攻撃が当たらないように、しっかりと身を屈ませた。

「ぐっ…!」

「飛影!!」

猛攻が続く中、飛影は一瞬の隙をつかれ、ガタスバルの触手に捕らわれた。

身動きを取ろうにも、完全に押さえつけられ、なす術なしだ。

「くそっ…!」

飛影が動きを封じられたことで、ガタスバルの標的は、秀一だけに絞られた。

何とか回避を繰り返す秀一。だが、ガタスバルの激しい攻撃が緩むことはない。

そして

『しゅ………秀一君!!』

「蔵馬…!」

ガタスバルは、地面に強く叩きつけるように、渾身の一撃を見舞った。

衝撃のあまり、土煙があがり、秀一がどうなったのか確認ができない。

奈由は身体を起こすと、咄嗟に駆け寄った。

『秀一君っ…秀一君…!あっ…!』

段々と土煙が落ち着いてくると、辺りが見渡せるようになってきた。

そして、今この瞬間に起きた出来事の全てが、ここに明らかとなる。

「…残念だったな」

秀一は、怪我一つ負わず、そこに居た。

一方ガタスバルは、秀一の鞭により、機械内部を破壊され、動きは完全停止。

先ほどまでの意気の良さは失われ、ただの鉄の塊と化していた。
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