木花*其の一*
□14.月夜の訪問者
1ページ/8ページ
『ただいまぁ〜』
「奈由、おかえり〜。もうそろそろご飯できるよ。着替えておいで」
玄関のドアを開けると
キッチンから良い匂いがしてきた。
それとワンセットで、聴こえてくる母の声。
当たり前の日常。
でも本当は、当たり前じゃない日常。
普段なら、真っ直ぐ部屋に向かうところだけど
今日は、母の姿をすぐにでも見たくて
料理する後ろ姿をチラッと覗いてみた。
……家に、お母さんがいる安心感って
何にも変えがたいものだな。
「ん、なに?どうかしたの?」
『ううん、何でもない!制服、着替えてくるね』
より、志保利の回復を強く願う。
奈由は、少し微笑むと
二階の階段を上がり、自分の部屋のドアノブを捻った。
ガチャッ
「おお。帰ったか」
バタンッッッッッ!!!!!!