木花*其の一*

□19.乙女の迷い
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「今だよ!奈由ちゃん!!」

『は、はい!!』

プシューーーーー!!

ぼたんの合図に合わせて、殺虫剤を噴射すると、魔界虫は見る見ると弱り、そのまま地面に落ち、微動だにしなくなった。

『はぁ、この殺虫剤…本当良く効くね』

「ふふん。霊界殺虫剤の威力恐るべしだね!」

倒した魔界虫は、これで15匹目。

数千匹の中の15匹と考えれば、焼け石に水だが、奈由自身は、だいぶ虫退治に慣れつつあった。

心身共に神経は磨り減るけれど、多少なりとも、ぼたんちゃんの力になれている…そう思えばこそ、不思議と心に自信が湧き、且つヤル気も漲った。

「あ、そうだ!そろそろ、幽助に1回連絡してみるかな」

『連絡?どうやって?』

ぼたんは、胸ポケットに手を入れると、そこから小さなコンパクトを取り出した。

見た目は手鏡のようだが、蓋を開いてみると、モニターの付いた通信機だった。
すると、すぐさまモニターに映像が映し出され、ぼたんは画面に向かって声を掛けた。

「幽助!こちら人間界のぼたん!どうぞ!」

「おう!って………お、おい!?何で奈由がいるんだ!?」

画面の向こうに、映し出された幽助の姿。
向こうからも、こちらの様子が映し出されているようで…
ぼたんの隣で、モニターを見つめている奈由の姿に、幽助は目を丸くして驚いた様子を見せた。

『はは。幽助君…久しぶりだね』

「久しぶりってお前…何でぼたんと一緒なんだよ!?一体、何が…っておいおい!?何すんだよ蔵…」

突然、幽助側の映像が大きくブレた。

どうやら、誰かにコンパクトを取り上げられたようで
幽助ではない…違う人物が、コンパクトに映し出された。

神妙な面持ちを浮かべるその人物の登場に…奈由の頭の中は、一瞬にしてフリーズした。

「…何をしているんですか」


想定外だった。

まさか、画面越しに会った彼が
まさか、こんなに怒った顔をしているなんて…


『しゅ、秀一君…!?』


こ、こ、こわいよ〜〜〜!!(涙)
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