木花*其の一*

□20.嘆きの華
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ーーー闇雲に


『はぁは、はっ………は、け、螢子ちゃん、大丈夫!?』

「はっはぁ、奈由ちゃ…待っ…っ…はぁっ…くっ」

「螢子ちゃん!奈由ちゃん!急いで!早く!!」

息を切らし、額に汗を滲ませて

今にも襲いかからんとする
死神のような奴等から

彼女達は、必死に逃れようと

ただ、無我夢中で…走り続けた。

「待でぇェぇえエえ!!雪村ァァああア!!」

まるで、何かに取り憑かれでもしたような人間達が、螢子の名を喚き叫びながら、押し迫っている。

おそらく、標的は螢子のみ。

四聖獣のヤツらが、螢子が幽助の幼馴染だと嗅ぎ付けたんだろう。

人間を操り、螢子を襲わせて、幽助の弱みに付け込もうとしている。

何としても、螢子を守らなければ!

「逃がさんぞぉオオ!!ユき村ぁぁアアア!!」

鬼気迫る鬼ごっこから、必死に逃げ惑う3人は、校舎内をひたすら駆け巡った。

既に、体力の限界が訪れている螢子の手を、奈由はギュッと握り締めて、引っ張り上げるように走る。

先頭を行くぼたんは、後方を何度も確認しながら、奈由達の様子に気を配り続けた。

すると、職員室と書かれた表札が、3人の目に留まる。

「入って!」

『螢子ちゃん、こっち!!』

「っつ…!」

ぼたんの瞬時の機転と誘導により奈由と螢子は、飛び込むように職員室へ駆け込んだ。
すぐさま掃除用具を、突っ張り棒がわりにし、扉を封鎖して、一時的に落ち着ける場所を確保する事に成功した。

「はぁぁ〜…はぁ…ふ、2人共…大丈夫かい?」

『はぁはぁはぁはっ…くっ…何とか』

一連の出来事に、相当な精神と体力を消耗させ、3人は肩で息をしながら床にしゃがみ込んだ。

これが、本当に現実なの…?

悪い夢でも見てるんじゃないのかな。

「あ……竹中先生!?」

すると、螢子が突然、デスクの前に座っている教師の姿に気が付いて、立ち上がった。

どうやら、信頼できる先生のようで
警戒もせず、先生の傍へと駆け寄り助けを求めた。

「竹中先生!!外に大勢……変な人がいて!それに岩本先生まで突然おかしくなって襲いかかってき………え?」

ーーーゴトッ

螢子が、竹中先生の身体にソッと触れると…
竹中先生は、鈍い音を立てながらデスクに、力無く俯した。
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