木花*其の一*
□3.蔵馬と木花
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ーーーー前世
彼が言うに…木花(このはな)というのは、私の前世の名前らしい。
信じられるわけがない。
『あの……信じられないです』
「だろうね。忘れているのなら、信じられなくて当然ですよ」
『忘れてるって…普通は、前世のことって覚えていないものでしょ!?』
「それが普通でしょうね。だが、確かに俺は覚えている。……ある意味、普通の人間ではないからね」
普通の人間では……ない?
なんてファンタジーな話だろう。
でも、南野君の瞳は相も変わらず、真っ直ぐで美しい。
不思議と…信じてしまいたくなるような。
『……普通…じゃないって、どういうこと?』
奈由もまた、真剣な眼差しを南野へ向けた。
オレンジ色の夕日に照らされて、まるで、ドラマのワンシーンの様で、少しドキドキしてしまう。
「言ったら…信じます?」
『本当のこと…ならね』
非現実的すぎるこの話を、信じられる自信はなかった。
信じられる唯一の材料は
南野君の、真っ直ぐな瞳だけ。