誠凛でわちゃわちゃするお話。

□第15Q
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「黄瀬くんめ....!!」

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!」

「テツ、火神の腕やばいことになってんぞ」

「名前、可愛かったなあ...。
ねっ、桜井くん」

「え!? ...あ、はい! 可愛かったです...!」

「ふふ。やっぱり名前のことになると急に素直になるよね、桜井くん」

「えぇ!? そんなことないです...!
スイマセン!!」

「謝らなくていいのに〜」



「オマエら、何ほのぼのしてんだよ...!!」



どうもボクです。

ボクは今、とんでもない嫉妬心に苛まれています。


だってボクの名前が、黄瀬くんに抱きついて、にっこり笑って、頬を撫でて.....!!!



「ギリィ....!!!!!」

「黒子黒子黒子黒子黒子黒子!!!
離せ痛い!!!!!!!」

「だからテツ、火神の腕変色してる」



ッハ、ボクとしたことが。

キセキの世代を倒すための光を自分で無くそうとするなんて。


すみません、と一言言って火神くんの腕を離す。

確かに腕は変色していて、ボクにもそんな力が....!!! と若干テンションが上がった。



「にしてもテツくん、本当に名前が好きだよね。......妬けちゃうなあ」



寂しそうに目を伏せた桃井さん。

" 妬ける "というのはボクに対してなのか、名前に対してなのかはあやふやなところだが。


中学の頃からあれだけ猛烈にアタックされていれば、自然と桃井さんの気持ちには気付いた。

明確なきっかけは特に思いかばないが、桃井さんがボクの試合を始めてみた時から態度が少しずつ変わって行った気がする。

あれは確か中2の頃だから、約3年間。
桃井さんは一途にボクに好意を抱いてくれているのだ。


そんな桃井さんの気持ちを踏みにじったりはしたくない。
が、ボクの好きな人は名前だ。

彼女はボクを見つけるためにいろいろな手段を使ってくれる。
朝来るとボクの席に座っていたり、休み時間戻って来るとボクの席に座っていたり、昼休み戻って来るとボクの席に座っていたり。
.....あれ、ボクの席に座っていることしかなかったです。



「......」



でも、なんだかんだ一緒にいて落ち着けるから。安心できるから。

彼女のそばには、いつも人が寄ってくるんだとボクは思う。



「名前には負けられないなー。恋愛も、WCも。
あ、WCは誠凛に、だけどね!」

「さつき、まず俺が負けるとかありえねーから」

「ッハ、ほざけ! 俺達がぶっ倒してやるよ
なあ黒子!!」

「はい。青峰くんには負けません」

「...桃井サンの恋愛についてはスルーですか?」



改めて決意を固めたところで、ふと思う。


名前に負けられないということは、ボクに対してじゃなく名前に対しての嫉妬、ということでいいのか。
まあ好きな人より友達を取られて悔しい、なんてことはあまりないと思うけれど。



「だって桃井は黒子が好きなんだろ。で、黒子は名前が好きなんだろ。
だから黒子は渡さねーって意味だろ。たぶん」

「まあそうだろうな。さつきのテツへのアタックっぷりは見てて清々しいぜ」

「青峰くん、それ褒めてる?」

「貶してる」

「ひっどーい!!」

「桃井さん、落ち着いてください」

「......テツくんが言うなら...」

「良、こういうところだ。」

「.........な、なるほど...?」



つまり猛アタックしているのにボクが全く相手にしていなくてむしろ清々しいと。

そういうことでいいんですか青峰くん。



「あ、名前がクレープ屋さんに入ったよ。
宮地さんがアイスいちごチョコバナナで名前がタピオカミルクティー。
...あ、2人で半分こするみたい」

「え」

「な」

「は」

「へ」



上からボク、火神くん、青峰くん、桜井くん。

それぞれ一音ずつ情けなく口から漏らし、びしりと固まった。


−−−−半分ことかカレカノ以外としますか!?

同性ならまだしも異性!! 異性!!!!!


つまり半分こするということは2人はカレカノという訳で......



「...」

「......みんな大丈夫? 顔死んでるよ」



桃井さんが心配そうに顔を覗き込む。

整った顔立ちが目の前に迫り少しどきりとするが、今は名前だ。



「...付き合ってるん、ですかね。あの2人」



桜井くんがぽつりと呟く。


2人がクレープを分け合って笑う姿は、カレカノ以外の何にも見えなくて。



「......そう、かもしれないですね」



もしそうだとしたら、なんて短い恋だっただろう。

しかも片思いで、思いを告げることを許されない。


なんて、...なんて、−−−−−



「...んな顔すんなよ、テツ」

「そうだぜ。彼奴のことだし話してくれるよ」



へらりと笑みを浮かべた火神くんに、ボクは頷くしかなかった。





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