恋する動詞

□諦める
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「好きだよ」



この言葉はもう、彼女には届かない。










−−−−−−−−...










「うわああああ辰也ー!!」

「っと、どうしたのナマエ」

「どどどどどどどうしよう...!」

「...うん、少し落ち着こうな?」



うわああああ、と言いながら胸に顔をうずめてくる幼馴染。

いくら幼馴染と言っても年頃の女の子だし気安く男に抱き着くのはどうかと思うけれど。


どくどくと脈打つ心臓の音がナマエに聞こえていないかと不安になりつつも、綺麗で柔らかい栗色の髪を撫でた。

女性に抱きつかれて動悸が早くなるのは、...まあしょうがないだろう。



「福井先輩に、告白されちゃったあ...!」

「...っは?」

「どうしようめっちゃ嬉しいんだけど...ッ」



−−−−−−−そ、っか。


先輩に、告白されたんだ。





幼馴染が好きな人に告白されたんだ。

本当は祝福してあげるべきなんだろうけど、



「...」



素直に喜べないのは何故だろう。

それどころか胸がずきずきと痛む。


ナマエは大切な幼馴染だ。

もちろん好きだけど、それは"家族愛"。
"恋愛感情"ではないと思っていた。


−−−−−いや、"思い込んでいた"?



「...ッは」



気付けば幼馴染のことを好きになっていた、とか。

どこの少女漫画だ。



「辰也が協力してくれたおかげだよ!
ありがとう...!」



嬉しそうに笑うナマエを見ていると何も言えなくなった。


やっぱり俺はナマエのこの笑顔が好きらしい。

この笑顔を失わなくて済むのなら、



「−−−−おめでとう、ナマエ」



俺は幼馴染として、君の恋を見守ることにする。


−−−−どうか、幸せに。










((初めて誰かの幸せを願えた自分が、))



((ほんの少し誇らしかった))





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