恋する動詞
□懐かしむ
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ぱらり、アルバムのページをめくる。
中学の時の修学旅行の写真だったり、高校の時の文化祭の写真だったり、部活の時の写真だったり。
現在大学生の私からしたらだいぶ懐かしい写真を眺めていた。
「あれ、この手紙...」
真っ白くて、シールも何も貼ってない手紙。
ああ、これは確か−−−−...
−−−−−−−−......
中学3年生の私。
受験も終わって、残り少ない中学校生活を満喫していた時だった。
下駄箱に、見覚えのない真っ白な手紙が入っていたのは。
手紙を開くと男の子の字で「昼休み、話したいことがあるから教室で待っててくれ」ということが書いてあった。
封筒を見ると差出人は笠松幸男、女の子が苦手でろくに話せず、写真でさえ見るのが困難なほどだ。
まあ努力で普通に話してくれるまでにしたけど!!
「おっはよーナマエ!」
「あ、おはよー」
なんとなく、...本当になんとなくその手紙を隠した。
なんとなく見られたくなかったから。
「...」
昼休み、か。
−−−昼休み
「ミョウジ、いるか?」
来 た 。
平静を装って笠松くんに近付く。
私はそこまで鈍感ではないし、今からされるものの察しもなんとなくついていた。
心なしか笠松くんも少し緊張しているらしかった。
「...中庭、行くぞ」
「うん」
無言で歩く彼を私も追った。
やって来ました中庭。
日光が気持ちいい。
今日は暖かいらしいからラッキーだった。
「...ミョウジ、」
「ん?」
「好きだ」
「...っ、」
もっとどもるかと思えばきっぱりと伝えられた言葉。
思わず笠松くんを見れば真剣な目をして私を見ていて。
「ありがとう、笠松くん」
「...ん、返事は「私も、」...?」
「私も好き、だよ」
曖昧に笑ってそう返せば彼はぱちくりと瞬きした後、顔が真っ赤になった。
可愛くて思わず吹き出した。不可抗力です。
「...笑うな」
「...ふふ、ごめん」
不機嫌そうなことを言っていても、笠松くんはふにゃりと笑っていて。
その笑顔が、今も昔も大好きだ。
−−−−−−−−......
「いやー...懐かしいなあ」
「何がだよ?」
「っ!?」
急に覆いかぶさって来た人物を見れば、私の愛しい彼で。
「幸男か...、びっくりさせないでよ」
「おー、悪い悪い。で、何が懐かしいんだよ?」
「幸男が告白して来た時の手紙、残ってた」
にやりと笑ってそう言えばあの時よろしく顔を真っ赤にした幸男。
そして相変わらずふにゃりと笑っていて、やっぱり大好きだなあと実感した。
((たまには懐かしむのも))
((悪くないかも、ね))
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