恋する動詞

□見つめる
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俺の後ろの席で、友達と話しながらにこにこ笑うミョウジナマエさん。

どうやって見てるかって?
イーグルアイに決まってるだろ。

彼女は俺、伊月俊の片思いの相手だったりする。


惚れた理由は...まあ、主に外見だけど。

彼女を観察しているうちに、誰にでも分け隔てなく接する所だとか、時折見せる切なげな笑みだとか。

そういう所もひっくるめて、大好きになった。



「あ、伊月くん! 部活のことで話があるんだけど」

「カントク? 珍しいな、俺に話なんて」

「ポジション別に聞いて回ってるのよ。 この練習メニューなんだけど、PG的にはどう?」

「うーん、そうだな...」



−−−−彼女が、俺を見てる。


切なげに顔を歪め、俺とカントクが話してるのを見てる。

こういう所を見てると、彼女は俺のことが好きなんだと思う。

他の女子と話す時彼女は必ず俺を見て、切なそうに笑う。


...いや、好きまでは行かなくても脈ナシではないだろう。



「パス練をもうちょっと増やしてくれると黒子との連携も取りやすくなるな。」

「...そうね。うちのスタイルは高速パスワークによるラン&ガンだし、パス練はもうちょっと増やしましょうか。
...というか伊月くん、さっきから何ニヤついてるの? 気持ち悪いわ」

「ん? ...ちょっとね」

「もしかして、好きな子でもいるの?」

「!!」

「あら、図星みたいね」



にやりと意地悪く笑うカントク。



「で、誰だれ? 私も知ってる子?」

「...ミョウジナマエちゃんって言うんだけど知ってるか?」

「ナマエ...? 伊月くん、ナマエが好きなの...!?」

「ああ」

「...ふふふっ」

「...どうしたカントク、気持ち悪いぞ」

「失礼ね。...でも、いいことが聞けたわ〜♪」



まるで何時ぞやの練習試合が決まった時のようにスキップして教室に戻って行ったカントク。

...なんだろう、嫌な予感しかしない。



「あ、あのっ」

「!! ...ミョウジさん?」

「はいっ、ミョウジですっ」

「どうしたの?」

「え、と、...あの、」

「...?」



彼女の後ろでは、彼女の友達(だと思う)が頑張れ、など応援をしていた。

何故。



「あ、...っリコとは、どんな関係なの.....!?」

「...へ? カントクと?」

「うん...っ? カントク?」

「そ、バスケ部のカントク。知らなかった?」

「...えぇ、リコってカントクだったんだ」



すごーい、なんて声を漏らす彼女が凄く可愛かった。


−−−−今までずっと見つめてきた彼女が目の前にいる。

今すぐにでも抱きしめて告白して、なんて考えるけど振られたら怖い。

休み時間で皆いる訳だし。



「それで、あの...っ、言いたいことがあって、!!」

「言いたいこと?」

「ッ、」



こくり、真っ赤な顔で頷いた彼女。


...この反応は、告白しか考えられないんだが。

どうしよう、そうだったら凄く嬉しい。



「あ、ぅ、....っ好き.......ッ」

「...へ」

「好き、です...!」



茹で蛸みたいに真っ赤な彼女。

ふるふると小刻みに震え、周りで聞いていた女子や彼女を遠目に見ていた男達はきゃあきゃあだったりわいわいだったり話し始める。


その様子が可愛くて、頭を撫でた。



「ああああああの、」

「俺も好き」

「...へ」

「好き、だいすき」



そう言えば、彼女は泣き出した。










((見つめて、見つめられて))



((お互いの気持ちを知れました))






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