誠凛でわちゃわちゃするお話。

□第9Q
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がらり、体育館の扉を光樹が開くと先輩方がみんないた。

不思議に思っていると見慣れた桃色が見えて、そのままテツヤに向かって一直線。

テツヤの隣にいた私はそっと離れておいた。


ごめんねテツヤ。



「テツくん!」



ドサッとテツヤを押し倒した桃色。

まあ言わずもがな桃井ちゃん。

テツヤの胸に顔を埋めて泣き出した。



(−−−−え? ええ? えええー!?

えーと... とりあえず黒子死ねばいい!!)



男子共の考えが手に取るようにわかる。不思議。

とりあえず軽蔑した目を向けておいた。



「...桃井さん?」



桃ちゃんのクマさんすごいことになってる...。






























「はい、どうぞ」

「ん、アリガト...」



テツヤが缶コーヒーを桃ちゃんに手渡した。


どうやら桃ちゃんはテツヤに会いに誠凛に来たらしい。

でもテツヤはいなくて、雨の中傘も差さずに来たため服はびちょびちょ。

シャツが体にくっついてえろい桃ちゃんにドキドキした変態... げふん、先輩方はクマさんシャツを着た桃ちゃんにもドキドキしてリコ先輩に外周させられている、と。



「なるほど、先輩方が変態なのはわかりました」

「俺もか?」

「鉄平先輩は違いますよ」



(−−−−−黒子の元カノ (?) で青峰の幼馴染か...

試合中とは随分印象違ーな)



「...それで、何があったんですか桃井さん」

「...っ、どうしようテツくん...!

私...っ、青峰くんに嫌われちゃったかもしれない....!!」



テツヤのシャツにしがみついてぽろぽろと涙を流す桃ちゃん。

"青峰くんに嫌われちゃったかもしれない"そう言った桃ちゃんの声は震えていて、青峰が大切なんだということがひしひしと伝わってきた。



「何やってんのアホ峰」

「アホ峰?」

「アホな青峰、略してアホ峰」

「青峰ってそんな異名もあったのか...!」

「今度青峰に会ったらアホ峰って言ってあげてください。喜びますよー」



鉄平先輩とくだらない会話をしていると桃ちゃんがぽつりぽつりと話し出した。



「−−−−青峰くんは今年のI・H... 準決勝、決勝と欠場しました」



その時、息を切らせた変態... げふん、先輩方が入ってきた。

なんともナイスタイミングだ。


日向先輩がタオルで濡れた体を拭きながら桃ちゃんに問うた。



「らしいな... でもいったいなんで...!?」

「、故障です。主にヒジの...」

「ふうん... ま、なんとなく察しはついてたわ。原因は恐らく...」

「黄瀬くんとやった海常との準々決勝...でしょ?」

「! ...そうです。流石名前だね」



幸くんに森山さん、今吉先輩や諏佐先輩に誘われたのだ。

準々決勝をやるから見に来い、と。


私は桐皇でマネージャーだったわけではないけれど、マネージャーと同じくらい体育館へは行っていた。

だからマネージャーの仕事はわかるし、大変さもわかっている。

それに怪我や故障を見抜く観察力が私は高かったらしく、青峰くんの故障もわりとすぐわかった。



「"キセキの世代"と呼ばれるあの5人に弱点があるとすれば、才能が大きすぎることです。」

「...!?」

「"キセキの世代"は全員、高校生離れした特技を持っています。
けど体が出来上がっていない高校生には変わりないため、現段階ではその才能に体がおいついていない。

−−−−−だから無制限に力を全開にはできません。
もしすれば反動で確実に体を痛めます」



「そしてそれは... 青峰くんも例外ではなく、黄瀬くんもやった時、実はかなりムチャをしていたんです。

それに気づいた私はすぐに監督に試合に出さないように訴えました。

...青峰くんは酷く荒れました。

が、監督は聞かず半ば無理やりスタメンから外しました。


けど、それがさっきバレて...」





『さつきテメェ何勝手なことしてくれてんだよ!!
あんなもんケガのうちにも入んねーよ、余計なお世話なんだよ!!!!』


『でも... っ赤司くん相手ならまたムチャするでしょ!? もしそれで万が一...』


『だからそれが余計なお世話だっつってんだよ!!! いつから俺の保護者になったんだ!!
もう2度と顔見せんな!!

ブス!!!!!』


『...!!!
..........〜っ、もう知らない!!!
何よ青峰くんのガングロ!!!!!』


『Σ ガ...!? さつき! オイ!!』





「−−−−−というわけデス...」



「...つーかさ、」



今まで黙っていた大我が口を開いた。

かなりのジト目だった。



「お前黒子が好きなんじゃねーの?
だったら青峰に嫌われよーが知ったこっちゃねーじゃん」



その言葉を聞いた桃ちゃんはまた大きな瞳いっぱいに涙をためた。



「そうだけど... そーゆーことじゃないでしょお!?
テツくんの好きとは違うっていうか危なっかしいっていうか、どうしてもほっとけないんだもんアイツのこと...!!」



ビーッと泣き出した桃ちゃん。

体育館にいた桃ちゃん以外の全員が大我に冷たい視線を向けた。




「Σ え!? あっ... その、スイマッ」


「「「あーあ、泣ーかせた...」」」



「イヤッ、そのっっ」

「火神くんデリカシーなさすぎです」



テツヤが呆れたように眉を顰めて溜息をついた。


テツヤにも

女心を

諭された


あ、一句詠めた。



「−−−大丈夫ですよ、桃井さん」



ぽふ、と優しく桃ちゃんの頭に手を置いたテツヤ。


ゆっくり手を動かし、微笑んで優しく桃ちゃんに言う。



「青峰くんもちょっとカッとなって言い過ぎただけです。
本当に嫌いになったりしませんよ。

帰りましょう、青峰くんもきっと今ごろ探してますよ」

「...テツくん、」

「そうだよ。
青峰はなんだかんだ言っても桃ちゃんのこと大切にしてるよ? 私と征十郎の関係とは大違い」

「名前...ッ」



そっと桃ちゃんを抱きしめ、あとはテツヤに任せる。


私と征十郎はもう、ね。

というか喧嘩をしない。したとしても私が言い負かされて終わる。

まあ大切にはしてくれてる、とは思うけど。


それに長年一緒にいれば嫌いになりたくてもなれない。

ずっと隣にいたのが当たり前だから隣にいないと落ち着かない、みたいなね。



私達幼馴染はそんな関係だ。





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