誠凛でわちゃわちゃするお話。

□第14Q
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「名前ちゃん、だっけ?
よろしくね」

「あ、はい」



にっこり笑う黄瀬さんに対し私は苦笑い。

そしてスタッフさんのところに混じる清兄はぶすっと仏頂面。


そしてギャラリーの中でぴょこんと頭一つ飛び抜けた青い髪と赤と黒でグラデーションされた髪、......え?



「大我と青峰....?」

「名前ちゃんどうしたの?」

「あ、なんでもないです!」



びしっと服を着こなす黄瀬さんについて撮影ブース?に行く。

そこからでも充分に見える大我と青峰くんは私が気付いているのに気付いていない様子だった。

馬鹿だなあ、あの2人。



「じゃあまずは名前ちゃん、涼太くんに抱きついてみて」

「えW!!!?」

「思いっきりぎゅーっと」



いやいやいや無理です。

清兄に助けを求めると (ただ見ただけ) 眉間に皺を寄せていた。



「.....どう? 出来なさそう?」

「う...」

「無理なら涼太くんが、」

「っ、わ!?」



ええーいもうヤケだ!! どうにでもなれコノヤロー!!!!

こんな感じの心境で思いっきり黄瀬さんに抱きついた。


私が抱きついてるのは清兄、私が抱きついてるのは清兄、私が抱きついてるのは清兄、清兄清兄清兄清兄清兄清兄........



「!!」

「アイツ....」



そこからのことはよく覚えていない。

取り敢えず相手のことを清兄だと思えば恥ずかしいこともできることを発見した。


ただスタッフさんに声をかけられるまで黄瀬さんを清兄だと思っていたみたいでぎゅっと抱きついたままだった。
恥ずかしかった。



「名前ちゃん、ホントに初めてなんスか?」

「あ、はい。」

「初めてでここまでできるなんて凄いッスね! .......あ、よければメアド教えて。名前ちゃんに興味湧いたッス」

「え、あの、」



やはり清兄パワーは絶大だった。



「悪りいな黄瀬、コイツ俺のツレだから」

「え、......宮地サン!? どうしたんスかこんなとこで!」

「合宿の買い物に付き合ってたんだよ。行くぞ名前」

「うわわ待ってよ清兄!! 黄瀬さん今日はありがとうございました合宿で会いましょうね!」

「え、ちょ!!?」



最後早口になったけどまあいいや。

清兄に引っ張られるまま家に帰った。



.....あれ、スポーツショップは良かったのかな。










黄瀬side





相手役の子が来ない。

どうやら風邪を引いたようですぐに代理の子を探さないと撮影ができない。



そんな時に現れた、苗字名前ちゃん。



その子は緑間っちがいる高校の童顔の先輩( あえて名前は出さない )と何処となく顔立ちが似ていた。

まあ純粋に、可愛いと思った。










いざ撮影スタート、彼女には驚いた。

最初のおどおどっぷりが嘘のように自然に俺に接する。


笑顔も無邪気でキラキラしてて、中学の時青峰っちがバスケをしていた時の顔とダブって見えた。

.......ダメだな俺、未練たらたら過ぎてキモい。女かよ。


そんなことを考えていると名前ちゃんは悲しそうな顔をして俺の頬を撫でた。

心配そうに眉を顰めて上目遣いで見上げられるとぐっと来るものがあって。

思わず顔が赤くなったのを撮られただろうか。


つーかモデルの俺が一般人の女の子相手に赤くなるなんて、どうなんだろう。








「名前ちゃん、ホントに初めてなんスか?」

「あ、はい。」

「初めてでここまでできるなんて凄いッスね! .......あ、よければメアド教えて。名前ちゃんに興味湧いたッス」

「え、あの、」



びくびく震え、大きな瞳に涙が溜まっていく。

透き通るような蜂蜜色が涙で潤むのを見ていると、後ろから声がした。



「悪りいな黄瀬、コイツ俺のツレだから」

「え、......宮地サン!? どうしたんスかこんなとこで!」

「合宿の買い物に付き合ってたんだよ。行くぞ名前」

「うわわ待ってよ清兄!! 黄瀬さん今日はありがとうございました合宿で会いましょうね!」

「え、ちょ!!?」



ずるずると引っ張られて行った名前ちゃん。
合宿で会おう、とはどういうことだろう?

ふと気付くとよく目立っていた青と黒×赤の色も無くなっていて、
ああ、名前ちゃんについて来たのか。と1人思った。



「女の子で自分からメアド聞いたの、初めてなんスけどねえ....」



iPhoneを片手にふう、とため息をつく。


あの蜂蜜色の彼女は、今でも瞼の奥にしっかりと焼き付いていた。





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