桃井くん

□赤司さんと桃井くん。
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隣でさらさらと靡く鮮やかな赤い髪。

凛とした立ち振る舞いはいつだって帝光中女子生徒にとっての憧れの的だ。

男子からは高嶺の花として見られ、少し遠巻きに見られることが多いが。


容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能...、正に完璧、それに加えて家柄も良い。

そんな彼女は強豪女子バスケ部の主将だ。
そして俺は強豪女子バスケ部のマネージャーだ。



「...桃井くん?」

「っうわ!?」

「ふふ、どうしたの? ボーッとして」



くすり、おかしそうに微笑む彼女。

髪と同じ鮮やかな赤い双眸が緩く細められ、儚い印象を与える。


俺はここまで綺麗な微笑を見たことがない。

まあたかが中学生で綺麗な微笑を見たことがある方が珍しいか。



「あ、ごめん。なんか見惚れちゃって」

「...え?」

「赤司さんの髪、凄く綺麗で。
光が反射してキラキラ輝くところとか、さらさらで柔らかそうなところとか」



するりと髪を撫でる。

見たとおりさらさらのツヤツヤで柔らかい。


腰ほどまである長い髪なのに重たい印象は感じさせないし (髪色の所為もあると思うが) 、手入れは行き届いているし。

短い大ちゃんの髪よりも長い赤司さんの髪の方が綺麗ってどうなんだろう。



「...貴方、どんな人にもそういうこと言ってるの?」

「まさか。赤司さんは特別」

「っ、...」



ふい、と顔を背けた赤司さんの耳は赤くて。


いくら完璧と言われて高嶺の花の彼女でも、やっぱり女の子なんだよなあ。



「...期待させるようなこと、言わないでよ」

「へ?」

「なんでもないわ。行くわよ名前くん」

「、名前...」

「...貴方も呼んでくれるんじゃないの?」



悪戯っぽく微笑んだ赤司さん。


その笑みはどこか妖艶で、かっと顔に熱が集まった。



「...征ちゃん」

「呼び捨てではないのね」

「呼び捨てって慣れてなくて」



苦笑すると赤... じゃなくて征ちゃんはふっと笑みを零した。





((貴方に名前で呼んでもらえるとは、たくさんの嫉妬を受けそうだわ))


((それは俺だって))


((まあ私はキセキからなんだけどね))


((えっ))





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