桃井くん
□高尾さんと桃井くん。
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「どーも真ちゃんの彼女でっす」
「高尾!」
「ミドリン、同性愛者だったの?」
「違うのだよ!」
「そうなの、真ちゃんったらもー」
「お幸せにね、ミドリン」
「だから違うのだよ....!!」
はぁいドーモ、高尾ちゃんでっす☆
桐皇との練習試合の後、桜井と桃井クンのやりとりをじーっと見てた真ちゃんが気になって顔を覗き込んで見たら。
なんと泣きそうな顔をしていた真ちゃん!!
普通に聞けば「なんでもないのだよ」で済まされるから、比較的仲のいい黒子に聞いてみた。
『ねー黒子、真ちゃんが桃井クンと桜井のやりとり見て泣きそうになってたんだけどなんか知らない?』
『多分嫉妬ですね。緑間さん、桃井くんのこと好きですから』
『......はぇ?』
『あ、因みにボクも。あと黄瀬さん、紫原さん、赤司さん... 青峰さんはどうでしょう、幼馴染ですからね...』
『...え、ちょっと待って。桃井クンってそんなにモテモテなの!?』
『ええ、まあ。』
『うへー、すご』
『多分高尾さんも見たら惚れるんじゃないでしょうか。渡しませんけど』
『あはは、じゃあ今度会ってみるわ! ありがと黒子、おやすみー』
半ば無理矢理電話を切り、真ちゃんに桃井クンと会えないか聞いて、やっと桃井クンに会えた!!
って感じで冒頭に戻る。
実際に会ってみれば、...まあ。
やっぱりイケメンだ。
物腰も柔らかいし、初対面のあたし、しかも異性とも気軽に話せる。
「うーん...」
でも、" 好きになる "とは違うと思うんだよなあ。
「どうしたの高尾さん?」
「へ!? ...あ、いや、ちょっと考え事してて!」
「そっか。なんか相談があれば言ってね。
......まあ、異性だから話しにくいとは思うけど」
そう苦笑してぽんぽんとあたしの頭を撫でた。
「.....」
きゅん。
「...ん、ありがとね」
「うん」
「......高尾...」
「ぶっは、まだ大丈夫だって!
だからそんな怖い顔しないでよ真ちゃん」
そう。
" まだ "、惚れてはいない。
でも惚れるのも時間の問題かもしれないなー。
さっき、きゅんとしちゃったし。
「大丈夫って、何が?」
「へへ、何でもない、よ.....っくしゅん!」
「わっ。大丈夫?」
「高尾、体調管理に気をつけるのだよ」
「ん、わかって、る、っくしゅっ!!」
ふと気付けばもう日は沈みかけていて、気温も下がったようだった。
話し始めた時間も早いとは言えない時間だし、しょうがないとは思うけれど少し寒い。
いや、少しどころじゃなく寒い。
「....あ、そうだ」
桃井クンは何か思いついたようで。
ぽん、と拳で手のひらを叩いた。
...てゆーか天然? この人。
−−−−−ふわっ
「.........え、」
「セーラー服じゃ寒いでしょ? だからコレ、着てていいよ」
優しく肩にかけられたのは桃井クンが着ていたミントグリーンのパーカーで。
桃井クンの温もりが残るそれに、またもやきゅんとした。
袖を通してみると案の定ぶかぶか。
これが彼シャツ... いやパーカー?
謎の感動。
「.....高尾...!!!」
「ひぃ、怒んないでよ!! 不可抗力だし!!?
.....ま、大丈夫じゃなくなったのも不可抗力ってことで許して☆」
「...何だと?」
「ひいぃ真ちゃんがキレたー!!!」
あー、ダメだあたし。
惚れるものか、なんて意気込んでたのに惚れちゃったし。
「あ、名前くんメアド教えて! あとLINEのID!!」
「あ、うん。」
「ん、ありがとー!」
「...なんか、ミドリンと高尾さんって仲良いね。」
「えー..... そう? あたしこの前下婢って言われたけど」
「ミドリンなりの愛情表現だよ。あの性格だから勘違いされやすいんだけどさ、高尾さんが友達になってくれてよかったよ。
ありがとう」
優しく笑った名前くん。
この笑顔が真ちゃんに向けられた笑顔、ということに嫉妬する、なんて。
「...そーだね。あたし、真ちゃんのこと大事にするよ」
「そうしてあげて」
「うん!」
「高尾!! さっさと来るのだよ!」
「へーいっ、エース様!! じゃあまたね、名前くん。今度遊ぼ!」
「うん。またね、高尾さん」
「んふふ、名前で呼んで!」
「え、.....じゃあ和ちゃんで」
「むー、名前じゃないの?」
「慣れてもっと仲良くなったら、ね?」
人差し指に細い指をくっつけて、ぱちりとウインク。
惚れた。
あ、もう惚れてた。
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下婢 かひ
下僕の女ver.
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