” 月が綺麗ですね ”

□青峰くんに言いました
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ぴゅう、と一際強い風が吹く。

昼間までの暑さが嘘のような風の冷たさだ。


寒くてたまらないけれど、隣に歩く人物を思えばこんな寒さ全然苦じゃなかった。



「あーさみぃ...」

「...」



−−−−青峰、大輝くん。



キセキの世代エース、DF不可能の点取り屋(アンストッパブルスコアラー)と呼ばれる彼。

実は中学校も同じだったりする。


俗に言う一目惚れというものを青峰くんにした私。

偶然にもさつきとはクラスが同じでさつきを通して青峰くんとも知り合えた。

青峰くんを追いかけてこの桐皇に入学したのだけれど、青峰くんは気付いていないだろう。絶対。



−−−−−−で、そんな私が青峰くんと帰っている理由。

本当はさつきと帰ろうと思って待っていたのだが、さつきはまだ仕事が終わってないらしく「急で悪いんだけど青峰くんと2人で帰ってくれる?」とのことだった。
ちゃっかり2人で、のところを強調していて恥ずかしくなった。

さつきは可愛いんだから1人で帰ると危ないと反論したけど桜井くんにでも送ってもらうから、と。


そんなわけで2人で帰っている。



「...っ」



だが、気まずい。


いつも青峰くんといる時はさつきもいたから2人っきりは初めてだ。

2人っきりになりたいと思ったことは何度もあるが、実際になってみると沈黙が痛すぎる。
会話が見つからなくて、顔が火照って、どうしようもない。



「...苗字」

「っひゃい!?」



あ、変な声でた。


慌てて口元を手で隠すと、青峰くんはクツクツと喉で笑った。



「ククッ... 大丈夫かよ、ずっと黙ってっけど」

「っあ、うん、...大丈夫。
........あ」

「あ?」



柔らかな光を放つ月。

青峰くんを見上げた時、その月が目に映った。



「、...月、か」

「うん。...月、綺麗だね」

「ブフォッ!!?」

「!?」



いきなり青峰くんが吹いた。
真顔で。


驚いて青峰くんを見ると、げほげほと噎せていた。

不思議に思いながらも背中を摩ると一層噎せ始めた。
何故。



「っ、げほ...、お前、意味わかって言ってんのか」

「意味? ...っぁ、」

「...ッ」



いつか、緑間くんから聞いた。


−−−−夏目漱石は、"I love you"を月が綺麗ですね、と訳したらしいのだよ。

と。


私はさっき青峰くんに月が綺麗だねと言って、それで夏目漱石はI love youを月が綺麗ですねに訳して...

つまり私は青峰くんに愛してると言ったことになる。





..............!!!!!!!???










「あ、ぁの、っ」

「っうぁー.... つまり、は、.....っそーゆーことでいいのか...?」

「...はい」



そーゆーこと、というのは愛してるということか。

というか告白に愛してるは重い気がするけれど。


−−−−でも、ま、振られるだろうなあ。

俯いてぐっと涙を堪えた。



「...ありがとな」

「ッ、」

「俺も好きだ」

「...え?」

「ッ、.....俺も好きだよ、愛してる」

「ヘ、...っ」



顔をあげれば視界が真っ暗になった。


背中にまわされた暖かい感触とふわりと香る柔軟剤の香り。



「青、峰...くん.......?」



−−−−抱き締められた?



「あー...よかった」

「何が、」

「もし自惚れだったらすげえ恥ずかしいじゃねーか」

「ふふ、そうですね」

「...これからよろしくな、名前」

「!! ...よろしく、大輝」



するりと大輝の大きな体に腕をまわした。










((いつから俺のこと好きだったんだよ?))



((...中学の頃から。一目惚れだったんだ))



((! ...俺も))



((え、...))



(2人で顔を赤に染めた。)





−−−−−−−−−−−−.....

青峰が月が綺麗ですねの意味を知っていたのは赤司に教えて貰ったから。


僕にはこうなることを予測するなど容易いことだよ by 赤司

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