” 月が綺麗ですね ”
□木吉くんにメールしました
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ベッドに寝転がり、ケータイをぼんやりと見る。
メール作成画面が開いてあって、本文はまだ空白だ。
「.....はあ、」
突然だが、私は同じクラスの木吉鉄平くんが好きだ。
彼は天然だけどいつも何かを考えていて。
ふと見ればふわふわと花が舞うような笑顔、またふと見れば真剣に何かを考える表情。
そのギャップや優しさに、気付けば惹かれていた。
「....」
ケータイの画面を眺め、ふ、と息を吐き出す。
今は京都にいる幼馴染から教えてもらった、月が綺麗ですね、という言葉。
夏目漱石が訳したと言われる、日本流の " I love you " 。
「....言ってみよう、かな」
画面のキーボードに指を滑らせ、本文を作成していく。
月が綺麗ですね、とうち終わった時、急に心臓がばくりと音をたてた。
−−−−−人生初の告白というモノは、やはり恥ずかしい。
振られたらどうしよう、明日から普通に接せるかな。
もんもんと考えていてもキリがないことはわかってる、けど。
どうしても不安になってしまう。
「....っ、」
でも、言ってみないと現状は変わらないわけで。
意を決して送信ボタンを押した。
メールを送って、どれくらい時間が経っただろう。
そこまで時間は経ってないんだろうけど、体感的には数時間にも感じた。
ピロリーン♪
「ッ...!」
シンプルな音が静まり返った部屋に響き、メールが届いたことを知らせた。
木吉くんかもしれないし、他の人かもしれない。
妙に緊張する。
震える手で受信ボックスを開くと、差出人は木吉くんで。
「っ、」
やばい緊張。
ゆっくりそのメールを押せば、そこには一文だけ。
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差出人 : 木吉鉄平
宛先 : 苗字名前
件名 : 無題
本文
ああ、綺麗な月だな!
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見た瞬間、涙が溢れ出た。
((ちなみにその日は新月で、))
((月なんて見えていなかったんだ))
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