” 月が綺麗ですね ”

□木吉くんにメールしました
1ページ/1ページ

ベッドに寝転がり、ケータイをぼんやりと見る。

メール作成画面が開いてあって、本文はまだ空白だ。



「.....はあ、」



突然だが、私は同じクラスの木吉鉄平くんが好きだ。

彼は天然だけどいつも何かを考えていて。
ふと見ればふわふわと花が舞うような笑顔、またふと見れば真剣に何かを考える表情。

そのギャップや優しさに、気付けば惹かれていた。



「....」



ケータイの画面を眺め、ふ、と息を吐き出す。


今は京都にいる幼馴染から教えてもらった、月が綺麗ですね、という言葉。

夏目漱石が訳したと言われる、日本流の " I love you " 。



「....言ってみよう、かな」



画面のキーボードに指を滑らせ、本文を作成していく。

月が綺麗ですね、とうち終わった時、急に心臓がばくりと音をたてた。


−−−−−人生初の告白というモノは、やはり恥ずかしい。

振られたらどうしよう、明日から普通に接せるかな。

もんもんと考えていてもキリがないことはわかってる、けど。


どうしても不安になってしまう。



「....っ、」



でも、言ってみないと現状は変わらないわけで。


意を決して送信ボタンを押した。


















































メールを送って、どれくらい時間が経っただろう。

そこまで時間は経ってないんだろうけど、体感的には数時間にも感じた。



ピロリーン♪



「ッ...!」



シンプルな音が静まり返った部屋に響き、メールが届いたことを知らせた。


木吉くんかもしれないし、他の人かもしれない。

妙に緊張する。
震える手で受信ボックスを開くと、差出人は木吉くんで。



「っ、」



やばい緊張。


ゆっくりそのメールを押せば、そこには一文だけ。





−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

差出人 : 木吉鉄平

宛先 : 苗字名前

件名 : 無題


本文

ああ、綺麗な月だな!



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−






見た瞬間、涙が溢れ出た。










((ちなみにその日は新月で、))



((月なんて見えていなかったんだ))



.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ