帝光にトリップするお話。

□第3Q
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「すみません」

「...」

「あの、」

「...」

「...」



振り向いてくれない。

何故だ。


...あぁ、自分は影が薄いから気付かれてないって思ってるのか。



「あの、ハンカチ落としましたよ」



肩をそっと触れるとやっと気付いたのか振り向いてくれた。


驚いたように俺を見ていて、なんだがむず痒い。



「ハイどうぞ」

「! ...あ、ありがとうございます」



律儀にぺこりとお辞儀をしてハンカチを受け取った黒子。

今時の子には珍しい。


俺もこんな後輩ほしかった。
ちくしょう。



「これからは落とさないようにしろよ」



黒子の頭に手をぽんと乗せ、笑っておいた。

そのまま頭から手を離して大輝のところに戻ろうとすると、


ガシッ



「...え?」



腕を掴まれた。

結構強い力で、この細い身体のどこにこんな力があるのかと不思議に思ったほどだ。



「あ、の。...何故、僕を、見つけられたんですか?」

「...キミは、ここに存在してるだろ?」

「!!」

「だから、気付けない方が可笑しいんだよ」



すると黒子は面食らったような顔になり、次第に笑顔になった。

にぱっ、て感じじゃなく、にこ、って感じの。


言葉で例えるなら、"微笑"という言葉がぴったりであろう綺麗な笑みだ。



「ありがとうございます」

「いいえ」



いつの間にか手は離されていた。


もう1度頭を撫でて、今度こそ大輝のところに戻った。










「おー遅かったな名前、テツだったか?」

「ああ。なんかめっちゃ嬉しそうな顔してた」

「アイツ影薄いからな、気付いてもらって嬉しかったんだろ」



くく、と大輝は笑って俺の頭を撫でた。

身長低いからって撫でないで欲しい。





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