帝光にトリップするお話。
□第5Q
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虹村と屋上に座りお昼を食べる。
虹村は購買のパン、俺も購買のパン。
基本会話は無く2人して黙々と、そしてもぐもぐと食べていくが不思議と心地悪さは感じなかった。
ちなみに黙々、ともぐもぐ、を続けて言ったのはわざとだ。
「あ、そーいやあ苗字」
「ん?」
「部活どうすんだ? 見たところ運動部っぽいけど」
「前はサッカー部だったからなー...」
「うちのサッカー部そこそこ強いぞ」
「一応エースストライカーだった」
「うわ、すげえ」
あのカラフル集団を纏めてるお前に比べればまだまだだよ、という言葉は心の奥にしまっておく。
にしても、部活か。
今視野に入れてるのはサッカー部とバスケ部... それにソフトテニスとかの運動部。
文化部はありえない。
「迷ってるならバスケ部来ないか? エースストライカーやってたなら運動神経いいだろうしな」
「でも今更入ったって足手まといになるだけだろ」
「そんなことねぇよ。選手が嫌ならマネとか」
「マネージャーねえ...」
「何気に力仕事多いんだよ。今女子しかいないし部員も100人超えてるからドリンク運ぶだけでも一苦労だ。2、3軍には3人ずついるんだが1軍には2人しかいないんだよ。良かったら頼む」
ぱん、と手を合わせて俺を上目遣いに見てきた。
ぶっちゃけ可愛くない。
「...ん、考えとく」
「お! 頼むぞ!!」
にかっと笑って俺の頭をわしゃわしゃ撫でた。
「やめろよ、髪ぼさぼさになる」
「あ? いいだろ別に」
「やだよ」
「女々しいなお前」
「うるさいな」
髪がぼさぼさなのは嫌なんだ。
だって寝ぐせついたままで外歩きたくないだろ? な?
「今日見学来いよ。青峰もバスケ部だしな」
「そうだな。担任に言っておく」
「待ってるぜ。因みにやるとしたらどっちだ?」
「ん... 練習がキツそうだったらマネ」
「うちの練習は吐く奴もいるぞ」
「マネやります」
「即答かこの野郎」
「だってキツいのやだ」
「吐くって言っても1人だけな。1軍では」
「2、3軍では?」
「もっといるんじゃねぇか?」
「マネでお願いします」
「やっぱり即答か。...あ、俺主将だからコーチにも言っておく」
「監督じゃないのか?」
「今チームを率いてるのはコーチなんだ。監督も時々体育館で練習見てるぜ。すげぇにこにこしながら」
「なんか怖いな」
「因みに監督の練習メニューはコーチの練習メニューがお子様ランチに見えるほどキツい」
「尚更マネで」
「ははっ、まあ当たり前だな」
また頭を撫でられた。
俺の頭って撫でやすいのか?
虹村の手が置いてないところに自分の手を当てて少し考えた。
「苗字先輩...か。面白そうな人だな」
鮮やかな赤の双眸を光らせ、そう呟いた奴がいたのを俺は知らない。
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