帝光にトリップするお話。
□第7Q
1ページ/1ページ
ピピッ
桜先輩が短く、しかし鋭くホイッスルの音を体育館中に響かせた。
それも見計らったように虹村が「10分休憩!!」と叫び、その途端皆一斉にこっちに向かってくる。
疲れたー、などの声が聞こえた。
「お疲れ様でーす!」
「お疲れ様、ゆっくり休んでね」
ふむ、ドリンクとタオルを渡せばいいのか。
とりあえず虹村にドリンクとタオルを渡すとまた笑って頭を撫でられた。
「サンキュー」
「おい虹村、なんで俺入部しちゃってんの?」
「いいだろ別に。もし入部しないって言っても無理やり入れるから」
「無理やりはやめろ」
「で、どうだ? 仕事は」
「話そらすな馬鹿」
「ごちゃごちゃ言ってても無駄だろ」
「...はあ。 とりあえずマネージャーは力仕事が多いな、ドリンクとか。だからそういうのは俺がやろうと思ってる。あとドリンクはさつきに任せたらダメだ。死人が出る」
「は? 桃井のドリンクが?」
「やばいぞあれは、桜先輩と同じ作り方してもさつきのは紫になる」
「...それはやばいな」
2人で苦笑いしているといきなり背中に衝撃が来た。
ぐえ、とカエルが潰れたような声を出してしまったがまあいい。
「名前、テメー2年だったのかよ!」
「おー大輝。ごめんな、学年言うの忘れてて」
「別にいいけどよー... でも名前だし敬語はいらねーよな!」
「俺だし、ってなんだよ。まあいいけど」
「名前先輩っ、タオルとドリンク... って大ちゃ...、っ青峰くん! 先輩を離してよ!!」
「あ? いいだろ別に」
「よくない! 名前先輩はマネージャーなんだもん!!」
「俺達をサポートすんだろ? だったら部員の話を聞くのも仕事だろーが!」
「うっ...」
目の前で痴話喧嘩が始まった。
大輝は俺を後ろから抱きしめたままで、さつきは俺の右腕に絡みついて。
というか俺、なんでこんなに懐かれるんだろう。
可愛いから許すけど。
「虹村たすけて」
「やだ」
「...」
クツクツと笑った虹村はひらひらと手を振って俺達から離れて行った。
クソッ、虹村に裏切られた...!!
「...青峰、桃井。苗字先輩が困っているだろう」
「「!!」」
中学生にしては落ち着いた声色。
そっと頭だけを向ければ燃えるような赤が目に入った。
その赤い双眸は呆れたように細められ、形のいい薄い唇からははぁ、と溜息が漏れた。
「離してやれ2人とも」
「...はーい」
「ッチ...」
渋々、本当に渋々だが離してくれた2人の頭を撫でるとぱあっと顔を綻ばせた。
やっぱりこういうところはまだまだ子供か。
ちらりと赤色の少年−−−−赤司征十郎を見るとばっちりと目が合ってしまい慌てて逸らした。
なんか怖いです赤司クン。
「すみません苗字先輩、ご迷惑を」
「気にしてないから大丈夫。お前もしっかり休憩とれよ」
赤司の頭もそっと撫でて桜先輩のところへ向かう。
...はずが、赤司を撫でた右手ががっちりホールドされていた。
ホールドしているのは言わずもがな赤司で。
「どうした?」
「...俺は赤司征十郎。お前、じゃないです」
「あぁ、悪いな赤司」
それじゃ、と言って手を赤司の頭から退ける。
...が、退けられない。
そりゃそうだ、赤司がホールドしてるんだから。
「赤司、離せ」
「...貴方は、」
「...?」
「不思議、...ですね」
ふわりと微笑んだ赤司。
年相応の幼さの残る笑顔だった。
((やばい赤司の微笑みやばい))
((怖いのか?))
((まさか、ありえない!!
あんなに幼く笑うんだな、赤司って))
((...幼く? (何かの間違いじゃ...)))
.