帝光にトリップするお話。
□第9Q
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窓際の4人席に2人で座り、雑談 (主に大輝の話やマネの仕事の話) をしていると、ぽん、と軽く肩を叩かれた。
振り向くとオレンジで切れ長の瞳が俺を映していてどきっとした。
だが彼はすぐに人懐っこい笑みを浮かべて、
「俺1人なんでご一緒してもいいっすか? 見たところ同じ年っぽいし!」
いいよ、なんて言っていないのに俺の隣に座って来た。
流石ハイスペック。
「俺は高尾和成、中1! よろしくでっす☆」
「高尾くん、ね! 私は桃井さつき、中1だよっ」
「俺は苗字名前。中2だ」
「んじゃあ桃井ちゃんと苗字サンでいいっすか?」
「や、呼び捨てでいいよ。敬語もナシ」
「そっすか? じゃあ名前で!」
「ん」
「ね、高尾くんは何部? 因みに私達はバスケ部だよ!」
「俺もバスケ部だぜ!!」
仲良くなれそー、とコーラを飲む高尾。
そんな高尾を横目で見ながらバニラシェイクをズコーっと飲んだ。
「で、本当はなんだ?」
「「え?」」
「自分は1人だから相席を、とか1人で来たやつの言う台詞じゃないだろ。
それにバスケ部だったらさつきのことを帝光のスカウティングに長けた美人マネージャーとして、1回くらいは耳にしたことあるだろうしな」
「び、っ美人!?」
「...はは、すげーな名前。なんでもお見通し、みたいな?」
ケラケラと笑った高尾。
「目的はないぜ。でもあんな熱心に見つめられたら気になるだろ?」
なー名前、と俺の肩を抱いて言った高尾。
...そういえば、こいつは。
「ホークアイの持ち主だったか...」
「ホーク、アイ?」
「あり。知ってんの?」
「...ま、高尾は特別で」
「ブフォッ!!」
高尾は飲んでいたコーラを盛大に吹いた。
テーブルにコーラが大量に飛び散って大惨事だ。
げほげほと噎せる高尾の背中をさすっておいた。
「ふーん。...桃井からのあだ名の特別、か」
「ゲホッ... つか俺が特別ってナニ!?」
「あー、まあいろいろ」
ポテトを口に運びながらちらりとさつきを見ると、すっと目を細めていた。
...あ、高尾終わったな。
「...あのー、名前サン」
「ん?」
「その哀れむような視線やめてくんね!?」
「あ、ごめんつい」
「つい!? ...え、俺なんかした?」
「どっちかと言えばやったの俺だ」
「Σ なのにそんな目向けられてんの俺!?」
さつきは興味対象を見つけた時目を細める癖がある。
だから高尾の学校と試合することがあったら (というかある) さつきは高尾の生年月日はもちろん、身長、体重、座高、家族構成、特技、好きな食べ物、座右の銘... 火神のようにバッシュを選ぶ時の癖なんかも知られているかもしれない。
そう考えると哀れみの目を向けずにはいられないだろう。
「またその目!?」
「あははっ。桃井からのあだ名どうしたの?」
「...さつき、程々にな。」
「「?」」
高尾と一緒にさつきまで首を傾げた。
当の本人がわかってないってどうなんだろう。
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