帝光にトリップするお話。

□第11Q
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今日は秋季昇格テスト。

俺は1軍のマネージャーだから基本3軍には行かないが、都合だとかで3軍のマネージャーがみんな部活を休んだ。

で、代わりに俺が行くことになった。解せぬ。



「お疲れ様、ゆっくり休めよ」

「ッ、ありがと、ござい...ま、す」

「ん。ほら黒子も」

「すいま、...っせん」

「いいから」



ぽんぽんと黒子の頭を撫で、みんな飲み干してすっかり空になったドリンクのボトルを抱えた。

3軍のコーチからこのボトルを置いたらすぐ戻ってこいと言われている為、きっと昇格テストの結果を発表するんだろう。


黒子のことを思うと自然と足取りが重くなったが、赤司なら才能を見つけてくれるだろう。

原作に沿ってくれていれば。



「...急ぐか」



ぽつりとつぶやき、さっきよりも歩くスピードを少し上げた。










−−−−−−−−−−..........










「...」



『秋季昇格テスト、今回2軍へ上がる者はなしだ』



コーチがそう言い放った時の黒子の顔が忘れられなかった。

絶望感に顔をしかめ、口をぽかんと開く黒子。
いつもポーカーフェイスの黒子からは考えられないほど歪んだ表情だった。



「はぁ!? なんでだよ!?」



第4体育館の扉を開こうと手を伸ばすと青峰の声が聞こえた。

びくりと肩が震えたが、そっと手を伸ばし扉を開ける。


2人とも、俺に気付く様子はなかった。



「バスケは好きです。...けど
入部してから半年... やはり向いていないものはどうしようもありません。
ましてやこの帝光中学校では、ボクはとてもこのチームの役に立てそうにありません」

「......」



大輝は一瞬沈黙した。



「チームに必要ない選手なんていねーよ。
たとえ試合に出られなくても.....
1軍の奴らより... 文字通り誰よりも遅くまで残って練習してる奴が全く無力なんて話あってたまるかよ。
少なくとも俺はそんなお前を見て尊敬したし、もっと頑張ろうと思えたんだ。

諦めなければ必ずできるとは言わねぇ。
けど諦めたら何も残んねぇ」

「.....」



黒子も沈黙。

眉を顰めて俯いた。


すると後ろで扉が開き、そこから来たのは赤、緑、紫の3人。

俺を認識すると後ろから抱きついて来てお菓子を催促する紫原だが、いつの間にこんなに懐かれたんだろう俺。



「青峰」

「、...っては!? 名前!!?」

「やあ、大輝」

「おま、っは!? いつの間に...!!」

「わりと最初から」

「「!!!!??」」



黒子も驚いたらしく、大きな目をさらに見開いていた。



「...最近見ないと思ったらこんなところにいたのか」

「あー向こうの体育館は人が多くて...」

「まあどこで練習しても構わないが。」



赤司が黒子を見る直前、少しだけ目を見開いた。

才能を感じた、のだろうか。



「...彼は?」

「あー... いつも一緒に練習してんだ」

「あれーこんな人いたっけ?」

「1軍じゃねぇからな」

「ふーん... なーんだ。ねーもー行こーよー」

「...いや、彼に少し興味がある。
面白いな... 始めて見るタイプだ」



原作はうろ覚えだが原作通りに進んでいることはわかる。


というか紫原が食べるお菓子のカスが頭にいっぱい乗ってるんだがどうしよう。

抱きついたまま食べるというなんとも器用なことをする紫原を振り払いたいが、体格故に出来ない。
ちくしょう。



「もしかしたら、俺たちとは全く異質の才能を秘めているのかもしれない。
...悪いが全員先に帰っててくれないか?」



−−−−−にやり、ほくそ笑んだ。


これで大丈夫。

黒子は、きっと1軍に来る...





これから起こることへの期待、そして俺達が卒業後起こるであろう出来事に不安を持ちつつも体育館を後にした。





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