帝光にトリップするお話。
□第12Q
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今日は日曜日。
和成と遊ぶ約束をした日だ。
服はチャコールグレーのテーラードジャケットにVネックのボーダーシャツ、そしてネイビーのデニムパンツ。
社会人の時と同じように選んだのだが、意外にも似合っていた。
顔が幼くなったから妙に大人びて見えるのではないかと心配になったがその心配はいらなかったらしい。
「...あ、」
和成の奴、もう来てた。
まだ待ち合わせ時間10分前なのに。
ふ、と息をついて和成に近寄る。
「和成」
「!! ...名前、来んの早くね?」
「和成の方が早いだろ」
「へへっ、待ちきれなくて。つーか名前おしゃれだなー」
「さんきゅ。和成もかっこいいじゃん」
和成は藍色のパーカーに白いロゴTシャツ、ベージュのクロップドパンツ。
カジュアルな服装で和成らしい。
「へへ、ありがとな」
「ん。...じゃあ行くか、ゲーセン」
「おう!」
にかっと屈託のない笑顔で笑った和成。
無性に撫でたくなって、ぐりぐりと撫でくりまわした。
−−−−−−−−−−......
やって来ましたゲームセンター。
太鼓の鉄人(達人じゃないのか)を2人でやった。
鬼の星マックスをフルコンした和成。すごい。
次にあのダンスゲーム。踊って点数を稼ぐアレをやった。
和成かっこよすぎた。男の俺から見てかっこいいんだから女の子から見たら卒倒ものだ。
一曲終わるとギャラリーができていて、わあっと拍手が起きた。
にこにこ笑ってギャラリーに手を振る和成ェ...
「何なのお前」
「ん? どったん名前」
「ハイスペックすぎるだろ」
「んふふー、そう?」
「ああ。さぞかしモテるだろうなあ、和成くんは」
「いやいや、そんなことねーよ。だったら名前の方がモテんじゃねーの?
ほら、なんか気遣いとか上手そうだし」
「そうか?」
「おー。初めて会った時もさりげなく桃井ちゃんのこと褒めてたじゃん? あれ結構難易度高いんだぜー」
「難易度って... 俺は事実を言っただけだし」
「そーゆーのがムズイんだって!
俺の友達とか好きだけど空回りしてブスとか言っちゃう奴らばっかだし」
「思春期にはよくあることだよ」
「名前も思春期だろ」
「俺はもう25だから」
「ぶっは! どゆこと!?」
ケラケラ笑う和成。
よく笑うな、と思いながらケータイで時間を確認するともうお昼。
そういえば腹も減って来た気がする。
「和成、もう昼だ」
「え、もう昼? ...そういえば腹が減ったような」
「俺も腹減った。から、昼飯どうするか」
「マジバでいんじゃね? 外にベンチあるし、そこで食べる?」
「あ、いいなそれ。じゃあマジバでいいか?」
「おー。んじゃ決まりっ!!」
2人でお互いのことや部活のことを話しているとあっという間にマジバに着いた。
中は流石お昼時、人で溢れかえっている。
某努力の人的に言えば、
見ろ! 人がゴミのようだ!!
的なね。
「おーおー、混んでるねえ。俺買ってくっから待っててよ。名前何にする?」
「え、買ってくるとか悪いよ。一緒に、」
「いーのいーの!! 俺がしたいだけだからさ!
で、何にする?」
「...じゃあ、照り焼きバーガーのセットでドリンクはバニラシェイク」
「了解。くく、またバニラシェイク?」
「バニラシェイク美味いからな」
「へー... んじゃあ一口頂戴ね!」
元気いっぱいに笑って俺の唇に人差し指を押し付けた。
長蛇の列に潜り込んで行った和成の見えなくなった背中を見つめつつ、改めて戦慄した。
−−−−−なんだ、アイツのハイスペックぶりは...!!
唇に指押し付けて、頂戴、とか!
俺絶対言えねぇ!! あ、でも多分修造辺りには言える!
離した人差し指に和成がちゅ、とキスをしていたような気がするが気のせいだ。うん。気のせいだと思いたい。
「...はあ」
HSK、コワイ。
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