帝光にトリップするお話。
□第13Q
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和成のハイスペックぶりに戦慄し、その後も思う存分遊んで和成と別れた。
それからはとくに目立ったイベントもなく、淡々と月日は流れて。
赤司が黒子の才能を見出してから3ヶ月。
ついに黒子が1軍体育館へやって来た。
ついに、とは言ってもそこまで時間は経っていないが。
「...」
「.......どうしたの名前? ニヤついてて気持ち悪い」
「ひどっ!!?」
「でも確かにニヤニヤしてるよ、桃井からのあだ名」
「あー、...ちょっと、な」
何やら話している黒子と赤司を見て目を細めた。
そういえば今日は2軍、3軍の合同練習日だ。
同じマネージャーの水無月アメリが言っていた。
アメリは3軍のマネージャーで同じクラス、しかも席が前後でそれなりには仲がいい。
原作ではこの時のミニゲームでテストをやっていたはずで、つまりこの試合を見れば黒子のスタイルが見れるということだ。
まあ自ずと見ることはできるのだが、気分的に早く見たい。
修造に無理言ってでも連れて行ってもらうか...?
「おい名前!」
うーんうーんと唸っているとその修造から声がかかった。
慌てて駆けて行くと驚いた顔の黒子。
そりゃそうだ、だって俺がバスケ部なんて知らなかったと思うし。
「名前、コイツどう思う」
「は?」
「" 才能 "は感じるか?」
修造が真剣な顔つきになった。
俺はこういう時の修造が嫌いだったりするのだ。
" 才能 "の有無を聞く時のこの真剣な顔。
別に部活は才能で決めるわけじゃない。
自分が好きな部活を自分の意思で選び、そして自分なりに努力して楽しむ。
そりゃあ大会もあるわけだから才能は多少なりとも必要だが。
でもここまで勝利に執着する帝光は少し嫌いだ。
「.....先輩?」
「!! ......あぁ、悪い。で、才能だっけ」
「おう」
「悪いけど、天才的な才能は感じない。
−−−−−でも、」
達人にはなれそうだ。
そう言うと修造はわからないのか不思議そうに首を傾げた。
赤司はより一層笑みを深め、ちらりと俺を一瞥したのだった。
−−−−−−−−−−.........
虹村side
名前に才能の有無を聞けば、感じないとのことだった。
達人にはなれそうだ、と意味深な発言を残したが。
だがしかし、やはり才能が無ければ1軍にいるのはキツいだろう。
そんな気持ちで真田コーチとミニゲームを見に来たわけ、だが。
−−−−−なんなんだ、これは。
普通ならありえない角度でボールが曲がり、曲がったところをよく見れば黒子がいる。
ボールに触っている時間が極端に短いタップパスで、上手くチームメイトをアシストしているのだ。
−−−−−おうおうなんだこりゃ!?
パスもビックリだが...
それよりいくらカゲが薄いっつっても試合中に見失うとかんなことあるかあ!?
「.........ミスディレクション」
赤司が俺の心情を察したように口を開く。
「手品 (マジック) などで使われる人の視線を誘導する技術 (テクニック) です」
「...手品ぁ!?」
「右手で派手な動きをして注意を引きつけ、左手で次のタネを仕込む
ああいうやつです
別にこの技術は手品限定のものではありません
人の目には様々な習性があります
視界に速く動くものと遅く動くものがあれば早い方を追ってしまう。目の前の人がふとよそを見たら同じ方を見てしまう。
.....など、そうした習性を利用し視線を操る技術の総称がミスディレクション。
彼はこれをバスケットに応用している。
例えばカットを切る直前、目線やしぐさでマークマンの目をボールや他の選手に誘導する。
−−−結果、元の存在感の薄さとあいまって
彼はコート上からあたかも幻のように姿を消す」
「ふ....ん.......」
名前が言ってた達人とはこの事か。
真田コーチの反応を見ると妙に納得した表情をしていて。
ぼそりと「手品とはこの事か...」とつぶやいていたのが聞こえた。
「...で、こうなることは全部わかってたんかオマエ?」
「少し違いますね。
方向性は予想通りでしたがまさか視線誘導 (ミスディレクション) を取り入れてくるとは思わなかった。
期待以上−−−です」
赤司はにやりと口角を上げた。
その嬉しそうな、そして何処か冷たい笑みを俺はじっと見つめていた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
水無月アメリ みなづき あめり
中2の3軍マネージャー。
母がフランス人、父が日本人のハーフで美少女。髪が蜂蜜色で瞳が蒼い。
女子力も高くて友達もたくさんいる社交的な子。そのため男女共に嫌われてはいない。
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