リクエスト

□リクオの告白〜夜リクオ編〜
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「ただいまー。」


リクオが学校から帰ってきた。


「リクオ様、お帰りなさい!」


妖怪達が出迎える。


あの一件以来、奴良組に棲まう妖怪が

増えた。



邸のあちこちから、リクオを出迎える

声が聞こえて来る。



リクオの後ろから、



「お邪魔します。」



と、カナが顔を出した。



「わぁ〜!

リクオ様、今日は女子を連れてのお帰

りだぞ!!」



誰かがそう叫ぶと、妖怪達が一斉に顔

を出した。



「ホントだ!可愛い娘だ!」



カナは慌ててリクオの背中に隠れる。



「皆、騒がないで!

子供の頃から一緒のカナちゃんだ

よ。

そんなにしたら、カナちゃんが怖がる

だろ。」



昔からここに居る妖怪達は、カナの事

を知っているが、最近になってやって

来た者は物珍しそうに、カナに好奇の

眼を向けている。



「人間の娘だぞ。」



と舌舐めずりをしている者も居る。



「取って食べたりしたら駄目だぞ!」



リクオがそう言ったので、カナは益々

リクオに隠れる様にした。



「あ…ごめんカナちゃん。大丈夫だ

よ。」



カナはひきつった笑みを浮かべた。



「さ、上がって!」



リクオに案内されて、家の中へと入

る。



リクオの家の中は、妖怪が沢山居ると

はいえ、お化け屋敷の様な感じではな

く、あちこちから賑やかな声が聴こえ

て、明るい雰囲気だ。



カナは、緊張を解いて、



「リクオくんの家って、何か…温かい

感じだね。」



と言った。




「え!?そ…そうかな…」



リクオは、驚いた顔をする。



「そうだよ。」



カナが笑う。



リクオは思わず嬉しそうな顔をする。



確かに、このところは何の事件もな

く、皆穏やかに過ごしている。



そして、以前は家の事をなるべく話さ

ない様に、隠す様にしてきたが、もう

その必要もないのだ。



「さ、入って。」



リクオは、カナを部屋へ招き入れる。



リクオの部屋は、いろいろな物が置か

れているが、きちんと片付けられてい

た。




「どうぞ。」



リクオがカナに座る様勧める。



カナは、部屋の中央に置かれたテーブ

ルの前に座った。



テーブルの上には辞書や参考書が置い

てある。



リクオはここで勉強しているらしい。



「………」



「えーと…」



改めて二人きりになると、お互い意識

して、言葉が出てこない。



そこへ、



「失礼しまーす。」



氷麗がお茶を持って現れた。



「あら、家長さん。珍しいですね。

今日は何のご用?」



「あ、えーと…」



カナは、改めて聞かれると、何をしに

来たのか分からない事に気付いた。



ただ、リクオと一緒に居たかったか

ら。



と答える訳にもいかず、



「ん〜別に…」



と答える。



「え…?」



氷麗は怪訝そうな顔をした。



「あ!ありがとう氷麗。」



リクオが割って入る。



氷麗は、お茶を出し終えると



「では。」



と、部屋を出て行った。



リクオは、カナの正面に座る。



カナは、リクオと目が合うと恥ずかし

そうに下を向いてしまった。



「え…と、お茶…どうぞ。」



リクオがお茶を勧める。



「え?あ、ありがとう。」



カナがお茶に手を伸ばす。



二人は照れて、何時もの調子が出な

い。



どうしたものかと思案していたリクオ

は、



「カナちゃん、今日はありがとう。」



と声をかけた。




カナは



「え?」




と、顔を上げる。




「これからもよろしくね。」



リクオが笑顔で言うと、




「え? あ、こちらこそ…です。」





「リクオくん、何か私、おかしいよ

ね。ごめんなさい。何時もの私じゃな

いよね。

どうしちゃったのかな…」



「そんな事ないよ。

カナちゃんは可愛いよ!」



リクオが思わずそう言ったので、二人

は顔を赤らめながらも笑ってしまっ

た。






暫くして、部屋の外から



「ちょっとお邪魔するわよ〜。」



と声がした。




リクオの母親の若菜だ。



「何?」



リクオが言うと、若菜は襖を開けて、



「カナちゃんがいらしてるのね?」



と顔を出した。



カナは、



「こんにちは。お邪魔してます。」



と頭を下げる。



「カナちゃん、これからお夕飯の準備

をするから、食べていかない?」



と、若菜が言う。



「え…でも、突然お邪魔したのにそん

な…」



「あら、そんな事気にしないで。

家は大歓迎よ!

リクオに女の子のお客さんなんて。

みんな大騒ぎよ。」


と嬉しそうに言う。



「母さん!」



思わずリクオが叫んだ。



カナは、



「え…と、じゃあ、ありがとうござい

ます。頂きます。」



と答えた。



「よかった。」



若菜は、少女の様な笑みを浮かべ

る。



「あの!」




カナは、部屋を出て行こうとする若菜

に声を掛けた。



「私にもお手伝いさせて下さい。」



「え!いいよカナちゃん、そんな

事…」



慌ててリクオが言ったが、



「あら、いいの?嬉しいわ!

人間の女の子とお料理なんて、何年ぶ

りかしら。」



若菜は嬉しそうに言うと、カナを連れ

て台所へと行ってしまった。



「………」




リクオは、心配そうにカナを見送っ

た。
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