鬼白小説 -短編-

□キミの時間
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グツグツと鍋を煮込む音だけが部屋中に響く。

この時間が、僕にとって、1番好きな時間。




ー君の時間ー



ビュン、と鬼灯の金棒が振り上げられる。

「いつになったら学習するんですか?普通、薬は依頼人が店に着いたらすぐに渡していただけるものですよね?どうしてわたしは毎回すぐに帰れないんですか?」

シュタッ、と白澤はドクロマークの小瓶を構える。

「仕方ないじゃないか。僕だって女の子と遊ぶので忙しいんだ!」


ガバッ、と桃太郎がお玉を掲げる。

「俺も、ギリギリで薬煮込まされてすごく迷惑なんですけど!!」


それぞれが武器を持ち上げ、奇妙な三角形が出来上がる。

ビリビリと3人の目から光線が出るが、鬼灯と白澤が本気モードに入ったため桃太郎は辞退し、仕方なく鍋を再びかき混ぜ始める。

お玉を鍋に入れ、くるりと一回混ぜた瞬間、鬼灯と白澤の戦いが始まった。


「なんでわたしはすぐに帰れないんですか!?」

鬼灯が手始めに近くにあるイスを投げる。

「いい気味じゃないか。お前の仕事が長引いてさっ!」

ひょいとイスをよけ、白澤が酒瓶を二つ、回転を加えて鬼灯に投げる。

次に鍋が飛んだかと思えば、壺が飛び、玄関が破壊されたかと思えば、枯れた金魚草が宙を舞う。


店が一通り壊れ始めたころ、鬼灯が自分の金棒を白澤に向かって猛スピードで投げ、見事白澤にヒットして決着は着いた。



「はい、出来ましたよ。鬼灯さん」

「え、もうできたんですか」
「えー、もう?」

「なんで2人ともあからさまにがっかりしてんだよ!!本当は2人とも一緒にいたいんでしょ!?」

「いえ、まだコイツを叩きのめしていないので」

鬼灯が白澤の頬をつねる。

「なぁ、兄ちゃん。何も言わずにこれ食べてくんない?」

白澤が枯れた金魚草を取り出すと、鬼灯はそれを足で粉々にする。

「この金魚草、どこで手に入れたんですか?」

「マキちゃんに貰ったんだよ」

「そうですか。それより、たまには貴方から地獄に来てくださいよ」

「お前だって仕事以外で僕に会いにこいよ」


この2人って…本当はすげえ仲いいんじゃねーの…?

桃太郎は、ただ2人のやり取りをを呆れて見ていることしかできなかった。






「鬼灯さん、遅れてすいませんでした」

「いえ、構いませんよ。では、桃太郎さん。漢方ありがとうごさいました。貴方も仕事をしなさい。白ブタさん」

「お前に言われなくてもしてるっての!ノロ亀!!」

「では」

最後の一発というように鬼灯は金棒を白澤の脇腹にヒットさせ、去っていった。



「全く。痛いなぁ…」

「白澤様。毎回鬼灯さんに殴られるの知ってて、なんでさっさと作っておかないんですか?」

「え、だってさ、桃タローくんが薬作ってくれてる間、鬼灯と一緒にいられるじゃん」



ケロっとした顔で言う白澤に、桃太郎はお玉を投げ付けるのだった。












*fin*

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